第十夜黄昏編-狼と過ごす夜【夜探偵フクロウと謎解き暗夜】
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第一章・フクロウのもっとも長い夜
今日の話は、ボクの知る話の中でも、もっとも長いお話…。
昭和の激動の時代を駆け抜けた、かの経済王、大上 天道(おおかみ てんどう)の物語さ。
大上 天道は、一代にして一大企業を作り上げ、経済界のトップに成り上がった人物。
実は、彼とボクは、昔とある接点があってね。
最初の出会いは、ある財閥に関わる事件だったんだ。
その財閥の名は、七羊財閥(ななひつじざいばつ)…。
第二章・事件
ある時、その財閥のお館で、事件が起きた。
とある使用人が、館の中で首を吊って自殺した…。
名前は、千輪 和子(ちわ かずこ)。
当人はいずれ故郷にいる恋人と結婚するつもりで、とても勤勉に働いていたし、財閥の当主からの評価も高かった。
なので、客観的に自殺する理由が見当たらない。
しかし、和子が自殺したのは事実だ。
そして…しばらくして、遺書が見つかった。
第三章・遺書
遺書には、こう書かれていた。
「私は、故郷の恋人と結婚するつもりで生きてきました。
しかし、この館で働いていて、その決心が揺らぎました。
なぜなら、新たな恋をしてしまったからです。
でも、その恋は禁断の恋…。してはならない恋です。
けれど、恋心を抑えることは難しく…。
一方で、約束を交わした故郷の恋人を裏切る結果になることも辛いです。
しばらく悩みましたが、このすべてを解決するには、
自ら命を絶つ以外にないという結論に達しました。
お父さん、お母さん、先立つ不孝をお許しください…」
第四章・捜査
警察は、自殺の線で間違いないとしながらも、一応、形ばかりの捜査を行った。
その結果分かったことは、和子が恋していたのは、財閥の跡取りである七羊 時郎(ななひつじ ときろう)ということ。
警察はこの結果を踏まえて、「和子の自殺もやむなし」と考えた。恋した相手が財閥の跡取りでは、報われるわけがない。かといって恋心を持ってしまったとあっては、故郷に残した恋人と結婚するわけにもいかず、追い詰められたのだろう…、と。
しかし、これで終わりというわけにはかいかなかった。どこからかこの情報を入手した記者が、新聞にこう書いたんだ。
「七羊財閥の御曹司、使用人をはらませ自殺に追い込む!」…とね。
第五章・記事
記事によるとこうだ。
七羊財閥の御曹司である七羊 時郎は使用人である和子に暴行をはたらき、和子の心を傷つけて自殺に追い込んだ。そしてそれを、金の力で自殺に見せかけようとしている…。
…この記事を書いた新聞は、当時様々な財閥に真っ向から反対する姿勢を示していてね。
だから、七羊財閥を攻撃するために、憶測だけでものを書いているようにも見える。
けど、七羊財閥としては見逃すわけにもいかなかった。
そこで、ボクに話が回って来たわけだ。
第六章・夜探偵
ボクに回ってきた依頼の内容はつまり、真相を解明すること。
七羊財閥の当主、七羊母堂(ななひつじ ぼどう)は人格者らしくてね。七羊財閥の名声よりも、和子のことを心配しているようだった。
つまり、仮に千輪和子が蹂躙されたということが事実であれば、七羊財閥は正式に謝罪する必要があるし、逆に蹂躙がウソであれば、今度はデタラメな記事によって、千輪和子の名誉が怪我されたことになってしまう…とのこと。
ちなみに、この話を持ってきたのが、大上 天道さ。彼はこの時、七羊財閥の使用人といってやってきた…。
大上 天道によると、天道、そして和子を含む七羊財閥関係者はこう証言しているという。
財閥当主・七羊母堂「確かに時郎は和子のことを気に入っていたのかもしれない。もしその気持ちが暴走して事件になったのであれば、七羊財閥の代表としてとして正式に謝りたい」
財閥長男・七羊時郎「和子のことは魅力的な女性だと思っていた。しかしあくまで使用人として接していただけで、特別なことをしたつもりはない」
使用人・千輪和子「恋心を抑えることは難しく…。一方で、約束を交わした故郷の恋人を裏切る結果になることも辛いです。しばらく悩みましたが、このすべてを解決するには、自ら命を絶つ以外にないという結論に達しました。」
大上 天道「ボクは単なる使用人なんで、まったくわからない。何も知らないんです」
読者への挑戦
さあ、今回はこの中からウソつきを探して欲しい。
4人の中にはたった一人だけウソつきが紛れ込んでいる。
そして、このウソつきが見つかれば、全体の構図が一気に変わる。まったく別のものが見えるハズさ。
さて…、ウソつきは誰だろう?
答えを明かすのは一週間後…。
…一週間の間、知恵を絞って答えを考えてほしい。
答えを明かすのは一週間後…正しさが示されるのは一週間後の夜だよ…。