第十夜彼誰編-狼と過ごす夜【夜探偵フクロウと謎解き暗夜】
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第八章・再会
ボクが大上 天道(おおかみ てんどう)と再び会ったのは、彼が老境に差しかかったころ。
そのころ天道は七羊財閥(ななひつじざいばつ)を乗っ取った上で解体。自らの企業を作って、経済界を支配下においた状況だった。
正直言って、ボクにそんな大層な人物と会う資格があるとは思えないんだけど…。
それでも、天道は、ボクのもとを訪ねてきたんだ。
千輪 和子(ちわ かずこ)の自殺事件ぶりになるね。
そして今度の来訪理由も、事件の解決依頼だった。
しかも、殺人事件。
殺されたのは、大上家で使用人として働く女性、千輪 和香子(ちわ わかこ)。
この事件を解決してほしいというのが、天道の依頼さ。
…正直、ボクは眩暈がしたよ…。
随分前に断った相手からの依頼だし、しかもその内容が、千輪 和子(ちわ かずこ)の自殺事件を連想させずにいられない。
思わず、「今度は本当なんでしょうね?」と口に出たくらいだよ。
第九章・使用人の死
天道から聞いた話が本当だとすると、千輪 和香子(ちわ わかこ)は階段から落ちて死んだ。
階段を下りている最中、手すりが崩れて階段から落下。運の悪いことに、落ちたその場所には金属製の鏡台があった。和香子はそこに、頭から落ちたんだ。
これだけ聞くと、事故としか思えない。しかし、天道は殺人だという。
その理由はこうだ。
ひとつ、手すりは確かに古いものではあったが、老朽化するほど古くなってはいなかった。なので、自然に崩れたとは考えにくい。
ふたつ、階段の表面から潤滑油らしきものが検出された。
みっつ、金属製の鏡台は普段は別の場所に保管されていたものだ。
ここまで聞いた上で僕は、「お前の言っていることは信じられない」と答えた。
すると天道は、「ワシの依頼を断るほどの頭脳だからこそ、お前に頼みに来た。今度は本当だ。頼む…和香子の無念を晴らしてくれ…」と泣き崩れたんだ。
天道の意外な態度を見て、さすがに断り切れなかったボクは、念のため天道家を調査することに。さらに、可能な限り警察からも情報を聞き出した。
すると、どうやらここまで天道が話した内容にウソはない。すべて真実のようだった。
第十章・証言
そこでボクは、天道が容疑者だと睨んでいる3人の人物に聞き込みをした。
その3人とは、いずれも天道の実子だ。
「自分の子どもを疑っているのかい?」と聞くと天道は、「ワシの子どもだから可能性が高い」と言う。…なるほど、ごもっともだ。
一人目、長男である大上 甲斐(おおかみ かい)はこう答えている。
「オレは殺してない。仮に使用人にをイラついたところで、殺してしまっては、この家の相続権を失う。金持ちケンカせずだ」
二人目、長女である大上 葉犂(おおかみ はすき)はこう答えている。
「使用人?殺してないわよ。いたずらすることくらいあっても、殺したりしないわ。バカバカしい」
三人目、次男である大上 柴(おおかみ しば)はこう答えている。
「あの使用人か。からかうと顔を真っ赤にして怒ってかわいかったんだけどな…。死んだのか。は!?オレが殺すわけねえだろ?」
この証言を聴いて、ボクが確信したことは…今回は、誰もウソをついていないことだ。
読者への挑戦
さあ、今回は、千輪 和香子(ちわ わかこ)殺害の犯人を当ててほしい。
なお今回、大上 天道(おおかみ てんどう)は一切ウソをついていない。
そして、大上家の三人の子ども…大上 甲斐(おおかみ かい)、大上 葉犂(おおかみ はすき)、大上 柴(おおかみ しば)の証言にもまた、一切ウソはない。
しかし、それでも千輪 和香子(ちわ わかこ)は殺された。
さて…、犯人は誰だろう?
答えを明かすのは一週間後…。
…一週間の間、知恵を絞って答えを考えてほしい。
答えを明かすのは一週間後…正しさが示されるのは一週間後の夜だよ…。