第九夜完結編-鶴に恩を返す夜【夜探偵フクロウと謎解き暗夜】
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最終章・真相
殺された木村 竜胆(きむら りんどう)が遺したダイイングメッセージ…アルファベットの「J」は何を意味しているんだろう?
シンプルに犯人のイニシャルと考えれば、城 鷹司(じょう たかし)や烏丸 順平(からすま じゅんぺい)が当てはまる。
けど、ダイイングメッセージというのは犯人にバレないよう、直接的な表現を避けるもの。
では、次にダイイングメッセージが記されていたのは競馬新聞ということで、鷲尾 遊馬(わしお あすま)はどうか。
ただ、竜胆は殺された際に咄嗟にダイイングメッセージを遺したはず。殺されることが分かったなら、もっと犯人が確実に分かるようなメッセージを遺しただろう。
とすると、犯人の名前に「馬」の文字がつくと分かっていて競馬新聞を買ったとは考えにくい。
まあ、たまたま競馬新聞を持っていた…という偶然も考えられるけど、その場合でも、城 鷹司(じょう たかし)の文字が何を意味するのかわからない。
そこで、考える方向を切り替えてみよう。
「J」は、アルファベットとして「ジェイ」と読むのではないかもしれない。
竜胆はギャンブラーだ。しかも、賭けポーカーの。
すると、「J」は、トランプの「ジャック」ではないかという考えに行きつく。
ご存知の通り、「ジャック」は、トランプで「11」を意味するカード。
そこで試しに、名前に「11」がつく容疑者はいないか探してみよう。
すると…鍔黒 士郎(つばくろ しろう)という人物がいるね。
「11」を漢数字で書くと「十一」この「十」と「一」を縦に繋げると、「士」という言葉になる。
暦に詳しい人なら、「2月/」「4月」「6月」「9月」「11月」といった、一か月の日数が少ない「小の月」を示す語呂合わせとして、「にしむくサムライ」という言葉があるのを知っているはず。この言葉、「にしむく」は「2月」「4月」「6月」「9月」をそのまま読んだもの。だけど、「11月」は何故「サムライ」なのか…というと、「十一」を「士(サムライ)」と書くからだね。
つまり、犯人は鍔黒 士郎(つばくろ しろう)。
彼が竜胆を殺した動機は、逆恨みだった。
竜胆が賭けポーカーに勝つ一方、負けている人物がいてね。そう…それが鍔黒 士郎。彼は賭けポーカーに負けた逆恨みから、竜胆を刺したんだ。
勝つ人間の陰には負ける人間がいる。
ただ、竜胆の陰になった人間は、鍔黒 士郎だけじゃない。鶴賀 白(つるが はく)もそうだった。
竜胆が賭けポーカーに勝つようになって家に帰らなくなったから、白は竜胆の顔も見れずに亡くなったんだ。
そういえば…ある人間に起きる運と不運は、生涯を通しれ見ればバランスが取れている…って話。これ、ある人間に起きる幸せと不幸せは、生涯を通しれ見ればバランスが取れている…って言い換えるなら、本当かもしれない。
っていうのも、竜胆の死に顔は、笑っていたらしいんだ。けど、大量の涙の跡もあった。多分、彼は死を悟った時、白に謝ったんだろう。
謝って謝って、最後、死ぬ間際に走馬灯の中で、死んだ白に許されたんじゃないかな。
人間、幸せであればあるほど不幸を強く感じるし、不幸であればあるほど幸せを強く感じる。最後、竜胆と白は幸せになれたんだと思いたい。
今日も明日も生きなきゃいけないボクらにとっては、そう考えた方が幸せだろう?
…さて…、もうすぐ夜が明ける…。ボクの時間はここまで。また次回、お会いしよう。