映画「来る」が見せたゲーム化しづらい新しい怖さ
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事前公開されていたトレーラーが怖かったので、楽しみにしていた映画「来る」。
けど、仕事の都合がなかなかつかず、行けたのはクリスマスを過ぎてから。
冬休みに突入していたせいか、友達同士で来たと思われる高校生がチラホラ。
そして観終わった時、それは起こった。
筆者の背後にいた高校生が「全然怖くなかったねコレ!」と、そこそこ大きい声でのたまったのだ!
その高校生の横にいた友人が即座に「今この場で言うべきことじゃないでしょ!」とたしなめる。
なんてよくできた友だちなんだ!すげえ!!
だが、「怖くなかった」という感想は、割とうなずける。
「来る」の新しい怖さとは?
映画「来る」は、ホラー演出が怖い映画ではないと筆者も思った。
なんといっても、「リング」の貞子/や「呪怨」の加耶子のようにわかりやすい幽霊が出るわけじゃない。
そもそも、怖がらせるために不気味な雰囲気・出来事・演出を積み重ね、出るぞ、出るぞ、出るぞ、出たー!的なことをやっているわけでもない。
だが、一方で筆者は映画「来る」は怖い映画だ思っている。
どういうことか?
映画「来る」で怖いのは、無自覚の行為が人に積み重ねる恨みなのだ。
たとえば主人公の一人、秀樹(妻夫木聡)は、なんちゃってイクメンパパ。子育ての本を次から次に読み漁り、急襲した知識イクメンブログを更新。子どもと一緒の画像も積極的にアップしている。
…が、それらはイクメンアピールのためだけに行っていることで、実際には子育てをさっぱり手伝わない。
控えめに言ってクソ野郎だ。
子育てにいそしむ世の女性から「最低!」と思われても仕方がない。
「死ねよこのクソ野郎」と言う罵声のひとつも言ってやりたくなる。
たがそれは、本当に「死ななければならないほどのクソ野郎」だろうか?化け物に命を狙われるほどのことだろうか?
秀樹(妻夫木聡)の妻・香奈(黒木華)にしてもそうだ。
彼女は秀樹によって単独での育児に追い込まれ、育児ノイローゼに陥り、最終的にはネグレクトに近い状態に行きつく。
もちろん、やってはならないことだ。
しかし、そこに「人を苦しめてやろう」「誰かを痛めつけてやれ」という明確な悪意があったわけではない。
弱いから追い込まれただけのこと。
そこにあるのは、「悪」ではなく「弱さ」。
なので、自分の人生を省みると、誰だって同じ要素を持っていることに気づくのではないだろうか。
「なんちゃってイクメンパパ」じゃないにせよ、他の人によく思われたいからとウソやごまかしを行ったことぐらい、あるのでは?
自分の娯楽を優先して、他の人の痛みに無関心だったことぐらい、あるのでは?
そんなこと、まったくないと言い切れるのだろうか?
自分ではそんなこと、まったくないと思っていても、他人から見たら、実は「最低!」と思われていたかもしれない。
だって、秀樹も香奈も、自分がやっていることが、他人から見て「最低」なことに無自覚だった。
そう、自分では気づかないだけで、自分の行為は他人に恨みを積み重ねているかもしれないのだ。
きっと「全然怖くなかったねコレ!」とのたまった高校生も、友人にたしなめられるまで、「その言葉が人を不快にするかもしれない」ことに無自覚だっただろう。
誰にだってそういうことぐらい、あるのだ。
でもそんな「誰にだってあること」が、殺されるほどの恨みに繋がってしまう。
そこに、映画「来る」の怖さがあると思う。
ホラー映画ではないが、「無自覚の行為が生み出す恨み」に近いテーマを持った映画だと「オールドボーイ」があるが、ホラー映画でこのテーマを感じたのは、筆者は本作がはじめてのことだった。
未見の人は是非DVD/ブルーレイや配信でチェックしてほしい。
原作「ぼぎわんが、来る」との違い
映画「来る」は、澤村伊智による小説「ぼぎわんが、来る」(角川ホラー文庫)が原作。
筆者は映画が楽しかったので、小説「ぼぎわんが、来る」も購入、さらに続編の「ずうのめ人形」、短編集「などらきの首」も購入して一気読みしてしまった。
なので、映画「来る」も原作小説「ぼぎわんが、来る」もおもしろい。
けど、映画と原作小説は設定だけ似ている別物といっていいだろう。
小説と原作では主要登場人物こそ同じものの、襲い来る怪異の本質が異なっている。
詳しい内容はネタバレになるので避けるが、「来る」者がなぜ生まれ、どんな人間を襲うのかが異なっているのだ。
なので、テーマも感じられる恐怖の質も違っている。
筆者は別物としてどちらも好きだ。できれば原作小説をテーマ変更せずに映像化した作品も見てみたい。
映画「来る」に近い怖さを持ったゲームと言えば?
映画「来る」の持つ「無自覚の行為が生み出す恨みの怖さ」に近い怖さを持ったゲームがあるか…というと、残念ながら筆者は知らない。
しかし、映画「来る」のビジュアル面の怖さである、「何者かがやってくる怖さ」を表現したゲームならある。
「five nights at freddy's」シリーズだ。
機械人形がやってくる恐怖!「five nights at freddy's」シリーズ
「five nights at freddy's」シリーズは、警備員となって、店舗の夜間警備を行うゲーム。
この店舗、いずれも「アニマトロニクス」を使用しているというのが問題点。
アニマトロニクスというのは着ぐるみを装着した接客用ロボット。
なぜ接客用ロボットが問題になるのかというと、閉店後に人間を発見すると、「着ぐるみを着ていないロボットがいる」と誤判定して、人間に無理やり着ぐるみを着せようとするのだ。
この着ぐるみ、ロボット用なので内部には針金などの金属類が露出しており、着せられた人間はもれなく死んでしまう。
つまり主人公は、ロボットたちを回避しながら警備をしなければならない!なんていうドブラックバイト!
主人公にできることは「アニマトロニクス」の接近状況を店内カメラでチェックしながら、シャッターを開閉すること。
ずっとシャッター閉めっぱなしにすればいいじゃんって?
それじゃあバッテリーが持たないというポンコツ店舗なのだ。
映画「来る」のJホラーテイストと、「five nights at freddy's」シリーズとでは恐怖のテイストが違うものの、「やってくる脅威」に対して受け身の対処をする…と言う恐怖感は通づるものがあるぞ。
基本情報
タイトル
Five Nights at Freddy's
デベロッパー
Scott Cawthon
配信会社
Scott Cawthon
対応ハード
iOS/Android
価格
360円