「見えているのか」
[投稿日:
霊感の強い人は、霊を視ることができる。
その一方、霊の方も「見られている」ことを気にしているようだ。
だからだろう。霊を視てしまった人が霊から「見えているのか」と問いだされるパターンの怪談が存在するのは。
Sさんが体験したのも、そんな怪談に分類されるような出来事だ。
買い物に出かけたSさんが、途中の道で信号待ちをしていた時のこと。
道路の向こうに、青白い人がいた。
具合が悪いのかな…Sさんはそう思ったが、あまりにも血色が悪すぎる。
もしかして生きていないのでは…そう思うような色だ。
Sさんは失礼と思いつつも、ついその人に見いってしまった。
信号が変わったら、文句言われるかもしれない。
あるいは…もしも生者ではなかったら…それどころではすまないかも…。
Sさんがそんなことを考えていると、信号の色が青に変わった。
やはりというべきか、青白い人はSさんに向けて歩いてくる。
Sさんはどんなことがあっても無視をしようと決め込み、足早に歩きだした。
すると…「危ない!」
大きな声が響き、Sさんは後ろへといきなり引っ張られ…尻もちをついてしまった。
後ろを振り向くと、スーツを着た会社員の姿。見覚えがない…赤の他人だ。
「なにするんでか…!?」
Sさんがそういうと「あなたこそ何してるんですか!」と、会社員は怒鳴りながら道路を指さした。
指の先には…信号機。
見ると、信号はまだ赤のままだった。
道路の向こうに青白い人間の姿はなかったという…。