青白い人【ぞくっ、とする怖い話】
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実話怪談を収集していると、中にはやや短めの逸話も存在する。
今回はそんな短めの逸話からひとつ紹介したい。
Tさんが交差点で信号待ちをしていた時のことだ。
道路の向こう側には、こちらへと向かう人たちがTさんと同じように信号待ちをしている。
その中に一人、明らかに青白い顔の人がいた。
体調が優れないのかな……。
そう思ってTさんは、その人をじっと見てしまった。
しばらく見続けてTさんは、あまり見つめては失礼だということに気づいた。
その時、信号の色が青になった。
「何か文句言われるかも……」
そう思いながらTさんが横断歩道を進んでいくと、その青白い人がTさんの方に進んでくる。
「やっぱり、文句があるのか……」
青白い人は明らかにTさんの方を目指して歩いてくる。
しかし、そのままだとTさんとぶつかるところまで来て、その人はすっ……と避けて歩いて行った。
Tさんは「よかった……」と、一瞬ほっとしかけた。
しかし次の瞬間、Tさんは気づいた。
すれ違う瞬間……その青白い人は、小声で、Tさんの本名をフルネームで、何度も何度も繰り返していたのだ。
もちろん、Tさんはその人と何の面識もない。
Tさんは背筋が震え上がったという。
もちろん、偶然に過ぎないのかもしれないが……。