心霊写真【ぞくっ、とする怖い話】
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写真屋に勤めていたAさんの話。
スマホのカメラが当たり前の今とは異なり、当時はカメラといえばフィルムカメラ。
写真を記録するためのフィルムをカメラにセットして撮影。フィルムを使い切ったらカメラから取り出し、「現像」という作業を行ってようやく写真を見ることができた。
現像は光の入らない暗室という特殊な部屋で作業する。このため、一般の人が自分で現像することは少なく、たいていプロに依頼していた。
写真現像のプロ……つまり、写真屋というわけだ。
その日も、Aさんはいつも通り依頼された写真の現像作業を行っていた。
そろそろ冬の気配が迫ったころだったためか、紅葉を写したものが多かったという。そんな中に……思わず目を奪われる1枚があった。
真っ赤な山が映っている。
……まさしく、真っ赤。
火事で燃えているように……いや、血のように赤い、紅葉の山。
数分……いやもしかすると数秒だったかもしれない。
しばしAさんはその鮮やかな赤に、魅入られていた。
そして、次第に視線は一本の木に引きつけられた。
その木には、人影が映っていた。
木の枝から、ぶら下がるように映る人影……。
首を吊っている、人間だった。
何かの間違いかもしれない……たまたま、写り込んだ影がそう見えるだけでは……?
そう思ってAさんは写真を見返した。
しかし、何度見ても変わらない。人が、首を吊っている。
さらに、写真を見ている内に、山の紅葉が、その死体から飛び散っているように見え始めた。
死体から鮮血が飛び散り、山が赤く染まっている。どうしてか、そう見えてしまう。
Aさんは結局、その写真を現像しなかった。
光が写り込んでいて、現像できなかったということにしたのだ。
Aさんはその後、わざわざお祓いを受けたという。