お守り【ぞくっ、とする怖い話】
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お守りの中に何が入っているか、ご存じだろうか。お守りというのはもちろん、初詣の際などに神社で買う、あのお守りだ。
実はお守りの中身は、買った場所によって様々。神社の名前が書かれた木の板ということもあれば、紙のお札ということもある。神器などのモチーフを金属やプラスティックで形どったものが入っていることも。
この話を教えてくれたAさんのお守りの中には、小さな刀が入っていたそうだ。金属でできた、銀色の刀。もちろん、形どっているだけで本当に切れるわけではない。親指くらいの長さの…いわば金属製ミニチュアだ。
そのお守りは、AさんとAさんの弟が母親から譲り受けたもの。
…というか、いつの間にか財布の中に強引に入れられていた…というのが実際のところらしい。いずれにせよ、Aさんとその弟は意識していないものの、常にそのお守りを持ち歩いていた。
ある夏休みのこと。Aさんとその友達とで、肝試しに行くことにした。場所は、近所にある廃墟となったビル。Aさんの弟も一緒に来たがったため、3人でそのビルへ。
ビルの中に入ると、ひんやりとした空気が漂っており、いかにも肝試しという風情を漂わせていた。
最初は全員まとまって探索していたものの、次第にそれではものたりなくなってきた。廃墟の雰囲気に慣れ、恐怖感が薄れたためだ。そこで、3人別れて、バラバラに探索することに。
1時間ほど探索を楽しみ…集合場所である入口に戻ると…Aさんの弟がいない。
10分ほど待っても来ないので、Aさんと友人は再度ビルの中に入った。1か所1か所確認していく…。
…しかし、Aさんの弟はどこにもいない。
「もしかして、行き違いになった…とか?」「すれ違っても気付かないような場所、あったっけ…?」「ないと思うけど、それ以外考えられないじゃん…」
しばらく話しあった後、2人は改めてビルの入口に戻った。…だが、やはり弟はいなかった。
「…どこ行ったんだろ?」「先に家に帰ったのかもしれない…」「じゃあ家に帰ろうか…」
もはや家以外に弟の場所の心当たりがない。仕方なく2人は家路についたという。
だが…家にも弟の姿はなかったそうだ。
Aさんが泣きながら弟を探していると、家にいた母親から何があったのか問われた。
一部始終を話すと、Aさんはこっぴどく母親に怒られたそうだ。しかし、とにもかくにも弟を探さないことには何も解決しない。母親は、警察に連絡をしようとした。
その瞬間。母親の携帯が鳴った。電話の主は、弟だった。
Aさんが先に帰ってしまったので、怖い。迎えに来て欲しいとのこと。電話を切ると、Aさんと母親の2人でビルまで向かったという。
ビルにつくと、弟は入口のところに座り込んでいた。疲れ果ててはいるものの、怪我をした様子もなく無事だった。
「ひどいよ、置いてくなんて…」そう言う弟に、Aさんは「ごめん…でも、見つからなかったじゃん。一体どこにいたんだよ?」と聞いた。すると弟は、少し考え込んだ顔をして…
「わからない…ぼく、一体どこにいたんだろう…?」
「はぁ…? 自分がいたとこだろ?わからないのかよ?」「うん…気付いたら、入口にいたんだ…」
家に帰ってから、二人は「ちょっと来なさい」と母親に呼ばれた。
「財布につけているお守りを出しなさい」大人しく母親に従うと、母親はお守りの紐をほどき、中身を取り出した。
Aさんの御守りから、刀のミニチュアが出てきた。刀は、ところどころ赤黒く錆びているものの、全体的には銀色に輝いていた。
弟さんの御守りからも、同じく刀のミニチュアが出てきたが…こちらは全体が赤黒く…ボロボロに錆びていた…。
それを見た母親は一言、「あの場所には二度と行っちゃダメだから」と言った。その日はそれ以上、何も言われることはなかった…。
後日、Aさんと弟は、母親から新しいお守りをもらったという。2人とも、大人になった今でも、そのお守りを肌身離さず持ち続けているそうだ。