道【ぞくっ、とする怖い話】
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あなたは通勤通学の途中、体調を崩して倒れた人を見たらどうするだろうか…?
助ける?それとも、見て見ぬふりをする…?
Tさんは、迷わず助けることを選ぶ人だった。
Tさんが仕事から帰宅する途中のこと。
いつもと同じ道を歩いていた。その道は人通りがほとんどなく、痴漢でも出没しそうな道だったという。ただ、不思議なことにこれまで犯罪が起きたことはないそうだ。
その時も、その道を歩いていたのはTさん一人だった。
ただTさんは、誰かから見られている…と感じていた。とはいえ振り返っても、見回しても、誰もいない。Tさん一人だ。しかし、誰かに見られているような感覚がぬぐえない…。
その日、それ以上何か起きたというわけではない。気のせいだろう…そう思うことにして、その日はそのまま家に帰った。
その次の日も、道にはTさん以外誰もいない。しかし…やはり、誰かから見られているような気がする。昨日より一層用心深くなっていたTさんは、誰かの気配を感じ取っていた。
でも…、見回しても、誰もいないのだ。
翌日、怖くなったTさんは、友達と一緒にその道を通ることにした。ちょうど週末ということもあり、家飲みしようと誘ったのだ。
ただ…その日は少し様子が違った。Tさんと友達以外に、3人ほどその道を歩いていたのだ。
友達にもあの不気味な視線を感じてもらい、一緒に正体を探りたいのに…。Tさんは少し残念に思ったという…。そう思った次の瞬間…
歩いていた3人の内、一人が道に倒れた。受身も取らないで…バタリ!…と。
派手な倒れ方だった。しかし、他の通行人は一切その人を見ない。もちろん、Tさんの友達も。
見て見ぬふり…というのではなく、まったく気付いていないようだ。
しかし、放ってはおけない。そう考えたTさんは、「大丈夫ですか…!」と言いながら倒れている人に駆け寄った。
倒れている人はまったく動かない。下手に動かすのもまずいかもしれない…。そう思ったTさんは、「大丈夫ですか?」と繰り返すことしかできなかった。
すると、しばらくしてTさんの友達も駆け寄ってきて、Tさんの肩を揺すった。
「何やってるの?大丈夫?」「大丈夫じゃないかも…まさか…この人…死んでないよね?」「何言ってんの?この人って誰!?」
「だから、この人!」
そういってTさんが、倒れている人を見ると…そこには誰もいなかった。
どうも、その場にいたTさん以外に、その人は見えていなかったようだ。
その倒れた人物が何者だったのか…。その人物が視線の正体だったのか…。Tさんにはまるでわからないという。