昆虫採集【ぞくっ、とする怖い話】
[投稿日:
Dさんの小学生時代。
そのころはまだ、そこここに野山があり、気軽に昆虫採集できる時代だったという。
今では当然のようにデパートで昆虫を販売しているが、当時はむしろ昆虫を買うという発想が珍しかった。
…そんな時代の話だ。
昆虫の中で人気なのはやっぱりカブトムシとクワガタ。
カブトムシやクワガタは、クヌギの木から出る蜜が好物。
そのため、クヌギの木が多い雑木林が狙い目だ。
もちろん、Dさん達も近所で一番クヌギの木の多い雑木林で、昆虫採集をしていた。
昆虫採集を成功させるためには、夜遅くに出かけるのがベスト…。
夜の内にクヌギに蜜をたっぷり塗っておき、集まってきた昆虫たちを、朝早くゲットするのだ。
その日もDさんは、蜜をしかけるため夜遅くに雑木林へ出かけた。
もう夜11時を回っていたという。
無音といっていいほど静かな夜。雑木林の中は灯りなどなく、真っ暗だ。
その中を懐中電灯を頼りに進んでいく。
…しかし、毎日のように来ている雑木林。Dさんは転ぶことはおろかつまづくこともなく進んでいった。
ところが……無事に蜜を仕掛け、帰ろうと振り返った時。
顔に何か、糸状のものがべたーっと触れた。
触ると、べたべたする。
きっとクモの巣だ。
…そう思ったDさんは思いきり振り払うと、来た道をスタスタと引き返した。
そのまま寄り道もせず、Dさんは家に着いた。
家のドアを開けると、手の指に違和感がある。
べたーっと、糸がまとわりついているような感覚だ。
クモの巣が手についっちゃったのか…。そう思ってDさんが手を見ると…
…それはクモの巣ではなく、髪の毛だった。
そして…
その髪の毛には…赤黒いべたーっとした液体がこびりついていた。
Dさんは思わず悲鳴を上げるほど驚き……風呂場で念入りに手を洗ったという。
ちなみに、それでも懲りずに昆虫採集を続けたとのことだが、同じ現象には二度と遭遇しなかったそうだ。