道案内【ぞくっ、とする怖い話】
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Mさんが友達と一緒に買い物へ出かけた時のこと。
買い物…といってもMさんも友達も、目的の品があったわけじゃなかった。
雑貨や服などをなんとなく眺めて、心に迫るものがあったら買う…いってみればウインドウショッピングのようなことを楽しんでいた。
色々な店を見ながら街を歩く二人。
すると、Tさんの目に一人の老人の姿がとまった。
荷物を沢山持ち、少し汚れた服を着た老人が、通行人へ熱心に話しかけている。
荷物の量からすると、この辺の土地勘がなくて道を聞いているように思えたという。
老人は、困ったような表情で必死に話しかけているが、通行人は誰一人として応じようとはしない。
みんな完全に、その老人を無視していた。
さすがに見ていられなくなり、Tさんはその老人に話しかけた。
すると老人の表情がぱっと明るくなった。
「ちょっといいかい…?」
そういって老人はスタスタ歩き、Tさんに手まねきした。
老人の方向には、薄暗い路地がある。
Tさんは何の疑いもなく、その路地へと向かった。
しかし、次の瞬間…。
…Tさんの腕がグイッと引っ張られた。
「痛いっ!」
叫びながら引っ張られた方を
Tさんが見ると、そこにはTさんの友達がいた。
Tさんの腕を引っ張っていたのは、友達だった。
「痛いよ…何で腕引っ張ったの?」
Tさんがそう言うと友達は、「あんたこそどこに行く気だったの!?」と怒ったように言う。
「だって、あのおじいさんが…」と、Tさんが老人のいた路地の方を見ると…
そこは路地などではなく、車が行き交う大通りだった。
Tさんは、ふらふらと車道に飛び出そうとしていたのだ…。
改めて見直したが、老人も路地も、もうどこにもいなかったという…。