嗚咽【ぞくっ、とする怖い話】

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Yさんが旅行に行った夜のこと。

色んな場所を観光して疲れた体にお酒を入れたため、21時前だというのに眠くなってしまったそうだ。

せっかくの旅行先の夜、もう少し起きていたいと思ったものの……眠気には耐えきれなかった。

Yさんは22時前には床についたそうだ。

その夜、不意にYさんは目を覚ました。

時計を見ると、深夜2時を過ぎたくらい。

「早く寝たせいだな……」

そう思ったYさんは再び寝ようとした。しかし……

……体が動かなかった。

まぶたすら閉じることができない……。

「これが金縛り/というやつか……」そう思ったという。

ただ……動かすことはできないが、感覚はあった。

右を向いて寝ているYさんの背後に、何者かがいる。背中の感覚で、それが分かるのだ。

……その何者かは、泣いていた。

しくしくと、すすり泣いている。

ときおりしゃくりあげるような声が聞こえ、息がYさんの首筋にかかった。

何が言いたいんだ……?

そもそも何者なんだ……?

Yさんは逃げ出したかった。

……せめて、何がいるのか確認したい。しかし、何もすることができない。

何もできず、ただ不安に耐えるだけの時間は苦痛以外の何物でもなかった。

どれくらい時間が経ったのか……。気付くと外が明るくなっており、背後の気配はなくなっていた。

体も、動くようになっていた……。

振り向くと、Yさんの後ろには……

……誰もいなかったし、何もなかったそうだ。

翌日、Yさんはホテルを変更したという。

【怪談】【怖い話】

この記事の作者

田中一広

ホラーゲーム作家。企画・シナリオ・グラフィック・楽曲・プログラムまでトータルでゲームを作る一方、ライターや講師としてゲームを伝える。もちろんゲーマーとして遊びもする人生ゲーム漬け野郎。妖怪博士。株式会社Wuah!地獄の代表取締役。

この記事が含まれるコーナー

ぞくっ、とする怖い話

それは、誰かが体験した物語。
背中がぞくっとする、本当にあった怖い話…。

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