第九夜-鶴に恩を返す夜【夜探偵フクロウと謎解き暗夜】
[投稿日:
[Update:
第一章・どん底
ある人間に起きる運と不運は、生涯を通しれ見ればバランスが取れている…なんて話があるね。
確かに、宝くじに当たる…なんていう大ラッキーを経験した人間は、たいていその後、転落する。
それまでの人生でまったく経験してこなかったような大金を手にすることで、人間はいい意味でも悪い意味でも変わってしまう。それまでの自分ではいられない。
けど、元々、自力で大金を手にする能力があったわけじゃないから、変化に耐えられず転落してしまうんだ。
いわば、わが身に余るほどの幸運。それでも人は、幸運を望むよね。
もちろん、誰だって経験していないことはわからないからだ。
木村 竜胆(きむら りんどう)もそんな一人だった。
彼…竜胆の人生は、その時どん底だった。
とりたてて夢も才能も持ち合わせていなかった竜胆は、高校を卒業してすぐ、賭け事で生計を立てるようになった。彼が選んだギャンブルは、賭けポーカー。
つまり、ギャンブラーなんだけど…ただ、ギャンブラーと言えるほど立派な戦績を持っていたわけじゃない。むしろ逆。
彼は賭けポーカーに負け続け、多額の借金を抱えていた。
その日もそうさ。彼は残り1万円という状況で、追い込まれていた。
いつもだったら「なんとしても勝って取り戻してやる!」って息巻いていたハズ。
けど、その日はどういうわけかやる気が起きない。
だから彼はその日、賭場から家に帰ることにしたんだ。
そして、途中で一人の家出少女と会う。
腹が減った上、寝る場所がないから泊めてくれという少女。
別にやましい気持ちが起きたわけじゃない。なんとなく、竜胆は少女を家に泊めてやることにした。
第二章・出会い
少女の名前は、鶴賀 白(つるが はく)と言った。
透き通るような白い肌を持っていて、食事を美味そう食べ、よく笑う。
ひとりの暮らしではなくなって、竜胆は日常がなんとなく楽しくなった。
だから、竜胆はなんとなくポーカーに行く気が失せ…。
コンビニでバイトをするようになった。
少しずつ、借金が返っていく。少しずつ、心に余裕が出てくる。
これが幸せってもんかもしれない。
竜胆は、そう思った。
ただある日、コンビニのバイト仲間から、遊びでポーカーをやろうと持ち掛けられた。
どうせやるなら、お金を賭けないと盛り上がらない。
といっても、バイト仲間で遊ぶポーカーの話。そこで、タバコ代くらいの金を賭けることになった。
すると、おもしろいように有利なカードが回ってくる。
今までの不運がウソのようだ。
いや、落ちぶれても竜胆は元ギャンブラー。だからそもそも、素人相手のポーカーに後れを取るようなことはない。
けど、そういう問題じゃない。
そもそも、悪い手が回ってこない。
ツイている。ツイているのだ。
竜胆はツキを手に入れたのだ。
第三章・絶頂
ツキを手にした竜胆は、再びギャンブラーの道に戻った。
ここでもやはり、ツイていた。
それまで負けまくっていた賭けポーカーに、勝つ、勝つ、勝つ。勝ちまくる。
借金もすべて返済し、アパートから一軒屋に引っ越すこともできた。
竜胆の人生は絶頂だった。
これが幸せってもんかもしれない。
竜胆は、そう思った。
ただ、白との会話が減っていた。いや、外泊も増え、白と顔を合わせる時間が減っていた。
だから、白が病に侵されていることにも気づかなかった。
そして…竜胆と顔を合わせることなく、白は亡くなった…。
第四章・絶頂
白が死んだその日、竜胆も命を落とした。
こちらは病気ではない…。竜胆は、腹部を包丁で刺されていた。
つまり、殺人だ。
まったく隠蔽されていないストレートな殺害方法だけに、犯人はすぐ見つかるかと思われた。
しかし、殺害現場は路上。このため、容疑者を絞り込むことができず、捜査は難航した。
ただ、竜胆は思わぬ場所にダイイングメッセージを残していたんだ。
それは…ポケットに入れていた競馬新聞。
彼は競馬新聞に書かれた、見出しのとある文字を、血で囲んでいたんだ。
その文字とは…アルファベットの「J」。
読者への挑戦
さあ、今回はこのダイイングメッセージを解き明かして欲しい。
ダイイングメッセージを残せるということは、被害者…つまり、竜胆の知っている人物が犯人ということ。
警察は、竜胆と関係がある人間4人まで絞り込むことができた。
いずれも、ギャンブル繋がりの人間さ。
それぞれどんな関係の人間か説明することもできるけど…やめておこう。逆に真相が遠ざかってしまう。
今回の謎は、ダイイングメッセージから直接導きだすことができる。
1)城 鷹司(じょう たかし)
2)鍔黒 士郎(つばくろ しろう)
3)烏丸 順平(からすま じゅんぺい)
4)鷲尾 遊馬(わしお あすま)
さて…、この4人のうち、犯人は誰だろう?
答えを明かすのは一週間後…。
…一週間の間、知恵を絞って答えを考えてほしい。
答えを明かすのは一週間後…正しさが示されるのは一週間後の夜だよ…。