枕返し
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妖怪として知られる枕返し
夜中に枕元にやってきて、枕をひっくり返す、もしくは、頭と足の向きを変えるという妖怪。
明確な外見は伝わっておらず、鳥山石燕の『画図百鬼夜行』では、小さな仁王のような姿で描かれている。

「枕を返す」という行為の意味は、単なるいたずらとされることもあるが、人の命を奪う行為という逸話も存在。
そもそも古くから存在した日本の伝承として、「夜人間が夢を見ている間、肉体から魂が抜け出ている」というものがある。
夢から覚める際に魂は肉体へと戻るが、その目印となるのが「枕」。
したがって、枕の位置が変化することで、魂は肉体へ戻れなくなり、死んでしまう…という理屈。
また、夢の世界を「異界」ととらえる考え方もあり、この場合「枕」は異界と現世を行き来するための「扉」と捉えられる。
したがって、現世での枕の位置が変化することは、異界と現世との繋がりが変化した、または絶たれたことを示す。
もちろん、現世へ戻ってくることはできなくなってしまう。
「枕」に対してそこまで神秘的なイメージを持たない現代の感覚からすると「枕返し」は単なるいたずら小僧にしか見えないが、伝承によっては凶悪な妖怪ともとれるのだ。
百鬼脱出行の枕返し
今回の百鬼脱出行で登場した「枕返し」は、人を夢世界に閉じ込めるという、凶悪な伝承をもとにした存在だった。
悪い夢を見ることもあるが、楽しい夢をみることも多く、しかも睡眠によって体調や気分がリフレッシュできる夢の世界。
そんな夢の世界を現実世界と比べると、「枕返し」が存在せずとも、「ずっと夢の世界へとどまっていたい」と思う人がいたところでおかしくはない。
ただ、ずっと夢の世界に留まることとなったら肉体は衰え、生命力は失われ、死へと近づいていく。
幸せな思いにまみれて死ねるのであれば本望という考え方もあるかもしれないが、先に触れた通り夢の世界が常に安定しているわけではなく、悪夢と化す可能性もあるので、決して幸せなこととは言えないだろう。
今回の百鬼脱出行において、主人公が「天国のような世界だが、どこか不安で、ここにいてはいけない」と感じたのも、夢の世界へ閉じ込められることの危険性を直感的に悟ったからではないだろうか。
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