公園デビュー

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これは、最近郊外のマンションに引っ越したばかりだという、主婦のKさんから伺った話である。

彼女には二歳になる息子がおり、人見知り気味な性格を克服させるためにも、近所の公園で「公園デビュー」をしようと決めたそうだ。

その公園は日当たりが良く、遊具も新しく、多くの親子連れで賑わっていたという。

ただKさんの息子さんは、残念ながら他の子どもたちに、なかなか溶け込めずにいた。

とはいえ、もともと人見知り気味な性格だったため、気長に公園へ通うことにしたという。

しかしながら、何度通っても、息子さんは一人で遊ぶのだという。

だが、息子さんによると、一人で遊んでいるわけではないらしい。

いつも砂場の隅で、女の子と一緒に遊んでいるのだそうだ。

その女の子は息子さんよりちょっと年上で、長袖のワンピースを着ているのだという。

息子さんとその女の子は、砂場でおもちゃを埋めて遊んでいるのだそうだ。

その話を聞いたKさんは、その夜、公園の砂場へ向かい、息子さんがいつも遊んでいるあたりを掘り返した。

するとそこには、泥にまみれた、小さな箱があったという。

その箱の蓋をぱかりと開けると、中には、潰れたカナブンの死骸や、鳥の脚らしきものと一緒に、赤黒く変色し、ぬるりとした粘液のようなもので覆われた、小さな指のようなものが、数本詰められていたという。

じっとりとした土と、何かが腐ったような甘い匂いが、むわりと鼻をついたそうだ。

Kさんは声にならない悲鳴を上げ、逃げるようにその公園を後にした。

それ以降、Kさんは少し離れた別の公園を利用することにしたという。

ちなみに、ママ友から聴いた話によると、Kさんが箱を開けた次の日、公園で不審な箱が見つかった……などという事実はなかったそうだ。

【怪談】【怖い話】

Creator

田中一広

五感を刺激する異界体験クリエイター。 企画/シナリオ/グラフィック/作曲/プログラムまで一人でこなし、アナログとデジタルの垣根を飛び越え独自の世界観をもった「異界体験」を作り上げるゲーム作家。 五感をゆさぶる異界へと案内します。

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