セルフレジ

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これは、郊外の巨大団地に住むDさんから伺った話だ。

その団地は、かつては「ニュータウン」と呼ばれており、当時は多くの住民によって賑わいを見せていた。

ただ「ニュータウン」は、ほとんどの住民が同年代。

このため、当時子どもたちだった世代がほぼ同じタイミングで成人し、就職によって団地から出ていくこととなった。

そして、残された親世代たちの間では高齢化が進行。

一部を除き地域住民のほとんどが高齢者層となった。

この結果、団地内のさまざまな商店は閉店。

駄菓子屋、おもちゃ屋はまっさきになくなり、次いでレンタルビデオ店、本屋もなくなった。

団地の中心にあるスーパーマーケットも、かつては家族連れで賑わっていたが、今は日中でも閑散としているらしい。

このため人件費を削減せざるを得ず、最近になって数台のセルフレジが導入されたという。

とはいえ、機械の操作に不慣れな高齢者はセルフレジを避け、有人レジに並ぶ。

このため、セルフレジのエリアはいつもガランとしており、白い照明だけが寒々しく床を照らしていたそうだ。

逆にいえば、セルフレジを使えばスムーズに会計ができる。

このため、デジタル機器の利用に苦手意識のないDさんは、いつもセルフレジを使っていたという。

その仕事帰りの夜も、そうだった。

Dさんは夕食用にタイムセールで安くなっている惣菜を買おうと、セルフレジに向かった。

すると、「いらっしゃいませ」 と機械音声が響いた。

だが本来のタイミングより、ワンテンポ早いように感じたという。

どうやらその感覚は誤りではなかったようで、Dさんがさらにセルフレジへと近づくと、「いらっしゃいませ」 ともう一回音声が響いた。

どうやら、Dさんが使おうとしているレジではなく、もう一台のレジから音声がしているようだ。

しかし、周囲にはDさんしかいない。

おそらく、誤作動だろう。

Dさんはそう思い、自分の会計を続けようとした。

すると…「ピッ」

自分のレジではなく隣のレジから、商品をスキャンする電子音が聞こえたのだという。

そして間髪入れず、商品を置く台が、カタン、と微かに沈む音がした。

目に見えない誰かが、商品をスキャンし、台へと置いたかのようだったという。

だがもちろん、周囲にDさん以外の人間はいない。

Dさんは、逃げるように会計を済ませて店を出た

それ以降Dさんは、帰り道が遠回りになるものの会社周辺のスーパーで買い物を済ませるようになったという。

どうしても団地のスーパーで買い物をしなければならない場合、有人レジを使うようにしているとのことだ。

【怪談】【怖い話】

Creator

田中一広

五感を刺激する異界体験クリエイター。 企画/シナリオ/グラフィック/作曲/プログラムまで一人でこなし、アナログとデジタルの垣根を飛び越え独自の世界観をもった「異界体験」を作り上げるゲーム作家。 五感をゆさぶる異界へと案内します。

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