心霊トンネル

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ゲーム開発会社に勤めるTさんから聞いた話。

話自体は、もう数十年も前、ゲーム開発に「徹夜で家に帰れない」がつきものだった時代の話だ。

Tさんはドライブが好きで、仕事が煮詰まって気分が滅入ってくると、いつもドライブをしていた。

特に深夜のドライブが好きで、会社近くの環状線を流すのがお気に入りのルート。

ただその日のルートは会社ではなく、自宅周辺だった。

というのも、その日まで開発が佳境だったため、休日なし、ほとんど徹夜という状態が続いていて、ようやく帰宅できたという状況。

家に着いたTさんは風呂にも入らずベッドに倒れ込み、爆睡した。

目覚めたときには、深夜。

疲れこそ取れたものの、せっかくの休日が一日何もできずに過ぎてしまった…という状況が納得できず、自宅周辺をドライブすることにしたのだ。

ちょうど腹も減っているので、ドライブがてらコンビニで弁当でも調達しようという目論見もあった。

ところで、彼の自宅がある県には、心霊スポットとされる古いトンネルがある。

建設時に土砂崩れが発生し、数名の作業員が生き埋めになったままコンクリートの下に眠っているという。

噂によれば、「白い女の幽霊が出る」だとか、「バックミラーに顔が映る」だとかいった現象が発生するのだそうだ。

ちなみに、実際に交通事故の発生率は高く、事故多発地帯とされている。

もちろん、心霊現象として事故が発生しているのかどうか、明確な因果関係はわからない。

Tさんも、まったく信じていなかった。

だからその日も、ルート上に心霊トンネルを組み込むことになんの躊躇もなかった。

ただ、ドライブルートを組み立てたら、心霊トンネルを通過するルートだった……それ以上の意味はなかったそうだ。

Tさんが心霊トンネルに入った時、オレンジ色のナトリウム灯が「じーっ、じーっ」と羽虫が焼けるような音を立てて明滅していたという。

当然ながら、幽霊の姿などどこにもない。

古くはあるが、ごく普通のトンネル、そう思ったそうだ。

そして次の瞬間、Tさんはガードレールに激突していた。

意味がわからない。

Tさんはパニックになって周囲を見回すと、すでにトンネルは通りすぎており、直後のカーブを曲がり切ることできずガードレールにぶつかってしまったようだ。

つまり、徹夜続きの無理が祟り、意識を失ってしまった……ということなのだろう。

ただ、その場所は、かつて土砂崩れが生じたとされる場所だったという。

とはいえ、Tさんは幽霊など見ていない。

ただトンネルに入って気を失い、死にかけたというだけの話だ。

【怪談】【怖い話】

Creator

田中一広

五感を刺激する異界体験クリエイター。 企画/シナリオ/グラフィック/作曲/プログラムまで一人でこなし、アナログとデジタルの垣根を飛び越え独自の世界観をもった「異界体験」を作り上げるゲーム作家。 五感をゆさぶる異界へと案内します。

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