廃墟めぐり
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世の中には、趣味で廃墟の写真を撮り歩く、「廃墟マニア」とでもいうべき人たちがいる。
この話をしてくれたEさんも、そんな「廃墟マニア」の一人だ。
そのときEさんが訪れたのは、山間部の国道沿いにある、小さな町工場の跡地。
その場所は「廃墟マニア」の間で有名になっている場所では一切なく、Eさんがドライブ中に偶然見つけた場所だった。
敷地への入り口は錆びたチェーンで封鎖されている。
ただ建物の壁は一部が崩落しており、そこから中の様子をうかがうことができた。
時刻は夕暮れ時。
西日が差し込んで、錆びた鉄骨とコンクリートのコントラストが美しい。
Eさんは夢中でシャッターを切ったという。
Eさんはそうやって撮影スポットを変えつつ、工場の奥へと進んでいく。
すると、工場の奥まった場所に、コンクリートの台座が並ぶ薄暗い空間があった。
その台座には、おそらく、かつてプレス機か何かが置かれていたのであろう。
しかし今は、台座しかない。
Eさんは「かつて存在したものが、既に失われている…」というシチュエーションに心を動かされ、思わずレンズを向けた。
すると ファインダー越しに見る台座の影に、何かがうずくまっているのが見えたという。
作業着のような、くすんだ灰色の塊。
それが、不自然に体をよじらせ、小刻みに震えている。
何か重いものを持ち上げようとするかのようだ。
いや、もがいているようにも見える。
Eさんはとっさにカメラから目を離した。
肉眼でその場所を確認する。
しかし、そこには台座があるだけだ。
光の加減か、あるいは目の疲れによるものだろう。
Eさんはそう結論付け、気を取り直して撮影を続けようとしたが、なぜかカメラが動かない。
どうにも気味が悪くなったEさんは、諦めて帰路についたという。
後日、Eさんはネット検索中に、とある掲示板の投稿を見つけた。
ニュースの内容を転載し、匿名であれこれ突っ込む…そんなコンセプトの掲示板だった。
転載されていたのは、口上でプレス機の誤作動により、工場の従業員が事故にあったというニュース。
若い従業員が上半身を挟まれ、数時間もの間、挟まれた状態で苦しみながら、助けを求め続けていたという。
Eさんは思わず、あの工場でファインダー越しに見た灰色の塊を思い出した。
何か重いもの…プレス機を持ち上げようとしていたのかもしれない。
いや、迫りくる死の痛みにもがいていたのかもしれない…。
とはいえ、転載されていたそのニュースが、Eさんの訪れた工場について語った者かどうかはわからない。
今となってはその掲示板の投稿も残っておらず、確認するすべはない。
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