家電量販店
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これは、イラストレーターを志望しているGさんから伺った話だ。
Gさんは、本格的なプロ仕様の液晶タブレットの購入を検討していた。
高価な買い物になるため、描き味にはこだわりたい。
そこでGさんは、秋葉原にある複数の大型家電量販店を回り、展示機で実際に試し書きをする「描き味チェック」を数日間にわたって繰り返していたそうだ。
ある店舗の展示コーナーでのこと。
目当ての機種の前に立つと、前の客が試したであろうキャンバス画面がそのままになっていた。
そこには、黒一色で、俯いた女性の顔のようなイラストが描かれていたという。
線は震えていて拙い。
しかし、妙に執着を感じさせる筆致で、髪の毛の一本一本までがびっしりと描き込まれていた。
気味が悪いと感じたGさんは、すぐにレイヤーを全消去。
自分の試し書きをはじめたものの、書いているうちになんとなく気持ち悪さを覚え、店を出た。
とはいえ、目的はあくまで、描き味を確認して液晶タブレットを購入すること。
このまま帰るわけにもいけない。
そこでGさんは別の量販店へと向かった。
しかし驚いたことに、そこの展示機にも、さっき見たのと同じ、俯いた女性のイラストが描かれていたのだという。
もしかして、自分が知らないだけで、マンガやゲームなどで人気のキャラクターなのだろうか?
あるいは、注目のVtuberなのかもしれない。
ただ、構図も、震えるような線のタッチも、まったく同じ。
とてもじゃないが、別人が描いたようには思えない。
熱心な客が、ハシゴして描いて回っているのか?
Gさんはそう解釈し、再びキャンバスを白紙に戻して試し書きをはじめた。
しかし、やはりどこか気持ち悪さを感じる。
結局その日は「描き味チェック」を諦め、家に帰ることにしたという。
数日後。
Gさんは購入の最終決断をするため、最初に訪れた店へ再び足を運んだ。
日を改めたことでGさんの気分も切り替わっていたし、さすがにもう、あのイラストも描かれていないはず。
そう考えていたものの…展示機の前に行くと、画面にはまた、あの女性の絵が描かれていた。
前回よりもさらに濃く、黒く塗りつぶされるようにして、その女性は描かれていたそうだ。
ダークな絵が好きな、常連のお客さんがいるのかもしれない。
いや結局のところ、Gさんが知らないだけで人気のキャラクターなのかもしれない。
だがGさんは、胸の奥に湧き上がる薄気味悪さにあらがえなかった。
結局、Gさんはその日、どの店でも商品を買うことなく帰宅したという。
そしてその夜、大手の通販サイトで同じ型番の液晶タブレットを注文した。
もちろん、届いた新品の液晶タブレットには、女性の顔など描かれていなかったそうだ。
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