聞かずじまい【ぞくっ、とする怖い話】
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Iさんが小学生のころの話。
当時、Iさんには親友と呼べるほど仲のよい友達がいたという。学校が終わると、いつもその友達の家で遊んでいた。
……その日も、その友達の家で遊んだのだそうだ。
たっぷり遊んだIさんが気付くと、時刻は18時になろうとしていた。Iさんの家では18時に夕飯を食べる習慣だった。遅れたら怒られてしまう……。
Iさんは焦って友達の家を後にした。
すると、玄関を出た時のこと。
ふっ……と、目の前に火の玉が2つ、現れた。
火の玉はそのままつーーーーと動いてゆく。早く帰らなくちゃ……と焦っていたはずのIさんだが、何故だか後を追いたくなり、その火の玉を追い掛けてしまったそうだ。
火の玉は、Iさんの家のお風呂場あたりで、ゆらりと揺れて、消えた。
風呂場の窓は開いており、中の様子が見える。
Iさんは、火の玉に中を覗けと言われているような気がして、窓から友達の家の風呂場を覗いた。
そこでは、おじいさんがお風呂に入ろうとしていた。
びっくりしたIさんは、「ごめんなさい!」と叫んで、急いでその場を立ち去ったという。
その翌日、Iさんは友達に謝った。「ごめんね…昨日帰る時、なんか気になってお風呂場覗いちゃったの。おじいさんが入るとこだったのに……」
すると、友達の顔色が変わった。
「え…?うち、もうおじいちゃん、いないよ?」
友達が言うには、数年前におじいちゃんは亡くなったのだと言う。
しかし、髪型や顔の感じなど、Iさんが見たおじいちゃんの容姿は友達のおじいちゃんの容姿に酷似していたそうだ。
……実はこの時Iさんには、友達に聞きたいことがもう一つあったそうだ。
しかし……結局それは聞かずじまいになってしまった。
それは、火の玉は、二つだったということ。一つが亡くなったおじいちゃんだとして……もう一つは誰のものだったのだろう。
何故かそれを口にするのが不吉に思われ……聞くことができなかった。
そのことがあってからその友達と遊ばなくなってしまい、聞く機会は完全に失われてしまったそうだ。