そんなわけがない【ぞくっ、とする怖い話】
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実話怪談を収集していると、中にはやや短めの逸話も存在する。
今回はそんな短めの逸話からひとつ紹介したい。
Rさんがまだ小学校のころ。
日が暮れるまで遊んだ帰り、ふと、雑木林に立ち寄った。
すると、雑木林の奥の方にある草むらに、人影を見つけた。
髪の長い女人で、真っ赤な服を着ている。
前かがみになっているところを見ると、何か探し物をしているようだ。
しかし、その探し方は少し奇妙だった。
草むらに落ちているものを探すのなら、腕で草をかき分ければ探しやすい。
しかし、一切草むらをかき分けようとしない。
ただただ、前かがみになって草むらをうろうろと探している。
Rさんはその姿をじっと見ていた。
すると、表情が異様なことに気づいた。
青白い顔の中に、真っ赤に血走った目。
息使いも荒く、どう考えても普通ではない。
怖くなったRさんは、その表情を見た後、すぐさま家へ帰ったという。
ただ……Rさんが最近ふとそのことを思い出すらしい。
あの女性は、自分の腕がなかったのではないかと。
しかも、ただ腕がなかったのではなく、そのせいで服が血に染まっていたのではないか。
だとすると……探していたのは、自分の腕なのではないか。
そんなことを考えては、そんなわけがないと自分でその考えを否定しているらしい……。