罪悪感【ぞくっ、とする怖い話】
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実話怪談を収集していると、中にはやや短めの逸話も存在する。
今回はそんな短めの逸話からひとつ紹介したい。
できちゃった結婚だったというUさん夫妻の話だ。
できちゃった結婚ではあるものの、2人は純粋に子どもが生まれたことを喜んだという。
2人とも、子どもが大好きだったのだ。
付き合っている内も、いずれ生まれてくる子どもの話をすることが多かった。
だから、子どもができて結婚という流れは、タイミングの問題。
今生まれて結婚するのか、それとも数年後になるのかという程度の問題でしかなかった。
……と、考えていた。最初の内は。
実際に子育てが始まると、イメージしていたものと、現実とがズレ始めた。
夜中に頻繁に泣き出し、寝不足になる。
映画館や居酒屋など、子連れだと入れない場所が多く、友だちと遊びに行けない。
2人はストレスとフラストレーションで追い詰められていった。
そして、子どもを見殺した。
いや、実際には、見殺しというほどではなかったらしい。
現実に起きたことは、子どもが熱を出した際、病院に連れていくのが遅く、間に合わなかった。
2人が追い詰められて疲弊したことを考えれば、「事故」と考えることもできるだろう。
一方で、うがった見方をすれば、「見殺し」と見ることもできる。
子どもがいなくなってみて初めて2人は、失ったものの大きさに気づいたという。
2人ともしばらくは、喪失感で何も手につかなかったそうだ。
そのようすに、近所の人間や友人たちも、表だって「見殺し」と非難することはなかった。
やがて数年が経過し、時間が2人の傷を癒していき……Sさん夫妻は再び子どもを授かったという。
若いころの過ちを繰り返すまい、と2人は覚悟を決めて子育てに臨んだ。
そんな2人の姿勢がよかったのか、子どもはすくすくと育っていったという。
そして……最初の子どもが死んだ年齢と同じに年齢になったときのこと。
子どもが高熱に倒れた。
Sさん夫妻は急いで病院に駆けこんだという。
しかし、医師が心配したのは子供よりSさん夫妻だった。
子どもは平熱で、病気でもなんでもなかったそうだ。
しかし、Sさん夫妻には子どもが熱に倒れ、うなされていたように見えた。
子どもはうなされながら、「今度は助けて……」と繰り返していた。確かに、そう繰り返していたのだという。