落書き【ぞくっ、とする怖い話】
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Bさんは、学生のころから住む家は必ず事故物件/を選んできた……という。
理由はもちろん、賃貸料金が安いから。
特に殺人事件のあった物件は破格だそうだ。
この話の舞台となる物件は、過去に何人かが自殺したという物件だった。
殺人事件のあった物件というのもなかなか見つからないらしいが、連続で自殺があった物件というのもなかなか見つかるものじゃない。
さらに、部屋の中に落書きが残されているという。
いくら掃除しても消えない。
本来リフォームすべきだろうが、大家が負担できないと言い張っているせいで、ずっと落書きは残されたまま……ということらしい。。
いわくにいわくが重なっている上落書き付きということで、やはり金額は破格。
Bさんは喜んでその物件を契約した。
そもそもBさんは、事故物件を選んで住むだけのことはあって霊や死後の世界など信じていない。もちろん霊感もない。
加えて、落書きがあったのは押入れの中。
普段はまったく気にならないということで、Bさんにとってはむしろ、契約しない理由がなかった。
引っ越しを終え、Bさんがその物件で暮らしだして数日経ったある日。
その日、押入れの中に布団を片付ける際、ふとBさんの目に落書きが目に入った。
文字だか記号だか、絵なんだかわからないような模様が黒い色で描かれている。
「ここまで強く残っていては、そりゃあ消えないだろうな」とBさんは思ったそうだ。
ただ、ちょっとあることが気になった。
物件の下見をした際にも落書きを確認していたのだが、その時より色が赤いように感じたのだ。
とはいえ、記憶違いという可能性の方が高い。
Bさんは気にしないことにしたという。
それから数日たったある日。
布団を下ろす際に再び、落書きが目に入った。
すると、落書きの色が赤黒い。
落書き全体ではなく、一部が赤みを帯びてきている。錆のようだ。
もしかして、ここだけ金属でも埋まっているのだろうか?
そう思ったが、さすがのBさんも気にしないで流すことはできなかった。
なので、それから数日、落書きを確認するようになった。
すると、毎日落書きが動いているように見えた。
赤黒い何かが、流れるように動いている。
まるで、血のようだ。
そんなある日……Bさんは、それが文字のようにも見えることに気づいた。
文字だとすると、「■はお■」と見える。
■にした部分は、落書きがごちゃごちゃしていて、文字として読むことはできない部分だ。
はじめBさんは、「人間は、点が3つあると両目と口のように見えて顔だと認識してしまう」というシミュラクラ現象のようなものかと思ったそうだ。
しかし、日が経つにつれて■の部分がクリアになっていく。
落書きは、日々、確実に動いている。色も赤くなっている。Bさんはそう確信した。
その直後Bさんは、不動産屋に引っ越しする旨を告げたという。
クリアになった時、Bさんの目に落書きは「次はお前」と読めたそうだ。