ゲームブック【ぞくっ、とする怖い話】
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「ゲームブック/」という種類の本がある。
誰が読んでも同じ物語が展開する一般的なの本と異なり、物語に読者の意思を反映させられるのがゲームブック。
文章の段落に1、2、3……と番号が振られていて、これを文章の指示に従って読み進める。
例えば、「別れ道がある。左右どちらに進む?」という場面があった場合、「左を選ぶなら段落42へ」「右を選ぶなら段落8へ」と書かれていて、読者が自分の意志に基づいて読み進むべき段落を選ぶというわけだ。
このゲームブック、一時期大流行した。
ちょうど、Kさんが学生時代のことだった。
そのころ、Kさんのクラスではこんないたずらが流行っていた。
休み時間にクラスメイトの教科書にいたずら書きを行う。
ただし、単なるいたずら書きじゃない。ルールがある。教科書の中にある文字を丸で囲み、メッセージを作るのだ。
たとえば「あ」と「ほ」を丸で囲めば、「あほ」というメッセージができる。
次に、ちょうどその日授業で使うページに「●ページへ行け」と指示を書きこんでおく。
授業の時間にそのページを開き、指示通りにページを読むと、メッセージを目にすることになる……というわけだ。
くだらないいたずらだが、Kさんのクラスではこれが本当に流行っていた。
なるべく何度もページをめくるようにさせた方が、メッセージが完成した時の驚きがアップする。
このため、皆沢山のページをめくらせることに躍起になっていたそうだ。
そんなある日……Kさんの友達が、このいたずらのターゲットになった。
物静かで、オカルトが好きな友達だったという。
その友達は、授業中教科書をペラペラとめくり……やがて手を止めるとしかめっ面になり……しまいには泣き出した。
それからその日は一日、元気がなかったそうだ。Kさんは、ゲームブックのいたずらをされたんだな、と直感した。
その日の放課後、Kさんは他のクラスメイトがKさんの友達にいたずらをしかけたことを突き止めた。
問い詰めると、「あんなに落ち込むとは思わなかったんだ」との言い訳。
一体どんなメッセージを書いたのか?と聞くと、「く」「ら」「い」というものだったそうだ。
しかし……実際には違っていた。
その日、友達は教科書を机に忘れて帰っていた。だから、確認することができたのだ。
教科書につけられた丸は、「の」「ろ」「い」となっていた。
動作が遅いという意味の「ノロい」という意味にも取れるが、オカルト好きな友達のことだから、「呪い」だと受け取っただろう。
「ひどいだろこれは!」Kさんは思わず怒鳴った。
するとクラスメイトは慌てながら「こんなこと、こんなこと書いていない!」と返した。
「ウソつくなよ!!」「だって……だって……」
「ぼくは鉛筆で書いたんだ!これ……こんな書き方していない!」
Kさんが改めて教科書を確認すると、「の」「ろ」「い」の文字につけられた丸は、赤黒い色で記されていた。
鉛筆でも……赤ペンでも……絵の具でもない。一体何で書いたのか、見当もつかない……。
いや……赤黒い色と、線の太さ、ぬったりとした質感は、まるで、血液で書いたようだった。
さらによく見ると、「の」「ろ」「い」の他、「く」と「ら」に黒鉛筆で丸が記されていたそうだ。
つまり……「の」「ろ」「い」についた丸は、誰か別の誰かがやったものということになる。
しかし結局、「の」「ろ」「い」に丸をつけた犯人が誰かは、最後までわからなかったそうだ。
その後、友達は学校に登校しなくなり、そのまま転校してしまったという。