気のせい【ぞくっ、とする怖い話】
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実話怪談を収集していると、中にはやや短めの逸話も存在する。
今回はそんな短めの逸話からひとつ紹介したい。
Kさんが旅行に行った夜のこと。
旅行の前日、夜遅くまで残業してしまい、睡眠時間が足りなかったせいか、いつも旅行に出た時よりも疲れがひどかったという。
そのためか、ホテルのベッドで金縛り/にあった。
ただ、Kさんは恐怖を感じなかったという。
Kさんは、金縛りは疲れから来るものと考える人間だったし、これまでの旅行でも何度か金縛りにあったことがあるのだそうだ。
ただ、この日の金縛りはいつもと違った。
時間と共に、体がどんどん重くなっていくような感覚がある。
放っておくと、布団の中に沈み込んでしまいそうだ。
泥酔した時の感覚に似ていて、気分も異様に悪い。吐き気がする。
いつしかKさんは、「助けて」と心の中で何度も繰り返していたという。
すると……、どれくらい時間が経過したくらいか知らないが、Kさんの体がふっと軽くなった。
これでようやく安心して眠れる……Kさんはそう思ったという。
この話、Kさんが恐怖を感じたのはここまでの話ではない。
Kさんが安心した次の瞬間のこと。
耳元で小さく声がしたそうだ。
その声はKさんに、「お前に助けが来ることはない」と告げたという。
Kさんはその瞬間、全身が震えたように感じた。
ただ、それが本当にあったことなのか、夢なのかわからないという。
「気のせいかもしれないと思っています。その方が精神的に楽なんで……」とKさんは言っていた。