老婆【ぞくっ、とする怖い話】
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Nさんには、忘れられないできごとがあるそうだ。
その夜は、しとしとと雨が降っていたという。Nさんは車を運転していた。
高速道路だったが、雨と夜の闇とで視界が悪いため、スピードを抑えて運転していた。
ふと、左のサイドミラーに後ろから近づいてくる気配を感じた。Nさんの車が遅いから追い抜こうというのだろう…。
…だが…よくよく考えると、Nさんの車は一番左の車線を走っている。左のサイドミラーに車が映るはずはない。
なら、この気配は何だ!?
Nさんは左のサイドミラーに目をやった。
すると…
そこには、ずぶぬれのまま、異様なスピードで走る老婆の姿があった。Nさんは恐怖からアクセルを踏み込んだ。
それからどこをどう走ったのかは覚えていないらしい。
気付くと、パーキングエリアにいたという。
そこで車から降りたNさんは、あることに驚いた。
雨など、降っていなかった。車のどこを見ても、濡れた形跡などなかったそうだ…。