ひな人形【ぞくっ、とする怖い話】
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Oさんの娘さんは、普段からあまりおねだりをしない子だったという。
高価なおもちゃはもちろんのこと、ちょっとしたお菓子についても、あれが欲しいこれが欲しいなどと滅多に言わない。
あまりに何も言わないので、Oさんはたまには奮発してあげよう、と思ったらしい。
娘さんのために、豪華なひな人形を新しく買ってあげた。
親から受け継いだひな人形もあったのだが、いかんせん小さく、なによりもう古かった。
ひな人形は女の子の将来を司る存在…立派な方がいい。
きっと、娘がこの新しいひな人形を見れば大喜びするに違いない…
…そう思った。
しかし、まったく逆だった。
新しいひな人形を見ると娘さんは怯え、「前のひな人形は!?」とOさんを問いただした。
娘さんのあまりの状況にOさんは驚いたが、その時には既に前のひな人形を処分してしまっていた。
神社で、焼いてもらって処分したのだ。
古かったためか、ひな人形は跡形もないほど完全に焼けてしまったらしい。
そのことを伝えると、娘さんは大きな声で泣きわめいた。
Oさんは娘さんをなんとかなだめようとしたが、娘さんはなかなか泣きやまない。
「死んじゃう、死んじゃう…」と繰り返したという。
「お人形さんは死んだんじゃなくて、お星様になったんだよ」
と言い聞かせ、泣きやんだ頃には数時間経っていた。
その数日後…Oさんの家が火事になった。
家は全焼したという。
どこから出火したのかわからないが、火の勢いはあり得ないほど凄まじく……家は跡形もないほど焼き尽くされたらしい…。
幸いなことに、OさんもOさんの旦那さんも、娘さんも無事だったそうだ…。