渇き【ぞくっ、とする怖い話】
[投稿日:
Yさんが、新しいアパートに引っ越しをして1か月/ほど経ったころの話。
引っ越して以来、どうも夜にのどが渇く日々が続いていたという。
しかし、Yさんは夜にお酒を飲むことが多かったので、そのせいかと思って気にしないでいた。
ただ、その日は、お酒を飲まなかったそうだ。
……にもかかわらず、夜中に強烈なのどの渇きを覚え、目が覚めた。
時計を見ると、深夜2時30分を指している。眠気もあるので、我慢しようかと思った。
……しかし、水が飲みたくて飲みたくてしかたがない。
どうしても我慢ができなくなったYさんは、布団から出ると、隣の部屋へと向かった。なぜ水道のある台所ではなく隣の部屋に向かったのか、Yさんにもわからない。とにかくYさんは、隣の部屋に向かったのだという。
隣の部屋を開けると、焦げ臭いにおいが鼻をついた。まさか……火事…!?
そう思ったYさんは急いで灯りをつけた。
水を飲んですぐに寝ようと思っていたので、灯りをつけず移動していたのだ。
しかしいくらスイッチをつけても、灯りがつかない。
カチカチ……。
カチカチ……。
何度かスイッチをいじり、やがてYさんは気付いた。
……灯りはついている。部屋が暗いのではない……黒い。部屋が煤で真っ黒なのだ。
まるで、部屋が火事で焼けてしまったようだった。
その光景を見ながらYさんは、自分の体が熱くなっていくのを感じていた。
まるで、炎にあぶられているようだ。熱くなっているのに伴い、のどの渇きも激しくなっていく。
Yさんの呼吸が荒くなっていく……。
熱も渇きもどんどん強くなっていく……。
そして……Yさんは意識を失った。
Yさんが気付いた時は、いつも通り布団の上だったそうだ。全身が汗でびっしょり濡れていたという。
おそるおそる隣の部屋を確認すると……
……何のことはない、普段通りだった。
灯りもついていなかったそうだ。
ただそれ以来、どうにも隣の部屋が怖くなってしまい、他の場所に引っ越すまで隣の部屋は一切使わなかったという。