影【ぞくっ、とする怖い話】
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怪談を読むと、怪異が寄ってくるという話がある。その代表的なものが、百物語だ。
百の怪談をひとつ語るたび、ひとつろうそくを消す。最後の怪談を読み上げ、すべてのろうそくが消えた時、何かが起こる…というもの。
Mさんから聞いたこの話も、怪談にちなんだものだ。
その夜、Mさんは部屋で怪談本を読んでいた。
読み始めたのは風呂上がりだったが、気付くと深夜2時。
読書好きで怪談好きだったため、つい夢中になってしまったのだそうだ。
湯冷めしてしまったせいか、部屋が物凄く寒く感じられたという。
翌日は日曜だったので、時間を気にする必要はなかった。
しかし、このまま読んでいたら風邪をひいてしまいそうだ。
そう思ったMさんは、その夜はもう寝ることに。
ただ、寝る前に水を一杯飲もうと思い、キッチンに向かおうとした。すると…
…キッチンの床に、影が映っていた。
人影だ。
…そんなわけは、ない。
Mさんは独り暮らし。この家には他に誰もいない。
…まさか、泥棒か…ストーカー/か……そう思って目線を上にあげると…
…誰もいない。
見間違いかと思って再び目を落とすと……やはりそこに影があった。
しかも…少し、Mさんの方に近づいているように思えたそうだ。
その瞬間、元々感じていた寒気が、一層強くなった気がしたという。
怖くなったMさんは、水を飲まずに床へとついた。
翌朝…キッチンを見ると、影などどこにも映っていなかった。
もちろん、誰かが侵入した形跡もない。
その後…深夜まで怪談本を読むということはやめたそうだ。