影踏み【ぞくっ、とする怖い話】
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Kさんが子どものころのこと。幼稚園に通う前か、通っている最中か……とにかく数十年前の話なので、具体的なところは記憶があいまいらしい。
Kさんは近所のSちゃん、Sちゃんの弟、Hくん、Hくんのお姉さんという5人でよく遊んでいた。ゲーム機がまだ普及してないころだったので、遊びといえば缶けりや高鬼、影踏みなどだった。
その中で特別な印象に残っているのが影踏みだという。
鬼とそれ以外に分かれて追いかけっこをし、鬼に影を踏まれた者が鬼になるというルール。いわば、鬼ごっこの「相手にタッチする」という部分を「影を踏む」に変形させた遊び。
鬼ごっことさして変わらないように見えるが、建物の影など、自分よりも大きな影が安全地帯になるという点でゲーム性が大きく異なる。
このため、同じ影の中には10秒以上いられないというペナルティがあった。鬼が同じ影の中にいる人間を見かけると10数えはじめ、10数える前に移動しないと鬼になってしまうというペナルティだ。
いつも鬼になってしまうのは、決まってSちゃんの弟だった。5人の中で一番年下だったからだ。しかし、どうしたことかその日はSちゃんの弟がまったく鬼にならない。
何度か影踏みを遊ぶ内、Kさんは変だなあと感じはじめたという。とはいえ、子どもだったので何もできることはない。変だなと思いながらも、そのまま遊んでいた。
すると、ある時妙なことに気付いた。
Sちゃんの弟の影だけ、薄い。
他の影に比べてSちゃんの弟だけ、影の色が薄いので見えにくい。だから、踏んでも気付かなかったのだ。
Kさんはそのことを皆に伝えようとして……やめた。どうしてか、言ってはいけないような気がしたのだ。
その数日後、Sちゃんの弟は数時間寝込むほどの熱を出した。
「体が弱っていたのが、影の色に出たのかな…」根拠はないが、Kさんはそう感じたという。