幽霊はいなかった【ぞくっ、とする怖い話】
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Aさんがまだ大学生だったころの話。
ある日Aさんは友達から、幽霊を見に行こうと誘われた。場所は、交通事故が多発することで有名なとある峠道。
そこは心霊スポットではないのだが、沢山人が死んでいるんだから、幽霊の一体や二体出るだろうというのが友達の意見だ。
大学時代で皆暇を持て余していたので、仮に幽霊が出なかったとしても、暇がつぶせておもしろいだろう、という。しかし、Aさんはその誘いを断った。
Aさんはホラー映画も観れないくらい、筋金入りの怖がりだったのだ。
ただ、Aさんが行かないとなると車がない。
友人たちは運転免許こそ持っているものの、車を持っていなかったのだ。
結局Aさんは折れ、Aさんが行かない代わり車を友人たちに貸すこととなった。
その結果…。
…幽霊など現れなかったそうだ。
そんなことがあってから数週間経ったころ。
Aさんは車内を掃除していると、後部座席のシートに一本の長い髪の毛が絡まっていた…。
友人の中に長髪の女の子がいるので、その子のものだろう…。Aさんはそう思い、髪の毛を引き抜こうと力を込める。
若干の手ごたえの後、髪の毛が抜けた。
すると…。
髪の毛の塊が…ごそっと…シートの隙間から抜けた…。
握りこぶしほどのその塊は、どろっとした液体によって濡れていたという。
後日、Aさんはその車を中古車屋に売ってしまったそうだ。