手まねき【ぞくっ、とする怖い話】

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Nさんが大学生だったころの話。

その日は、友達4人でドライブしていたという。

ドライブのさ中、友達がの一人がつぶやいたそうだ。

「あれ…あそこ、誰か手を振ってるね」「えっ…どこ?」

Nさんが聞き返すと、友達は指を差した。

「ほら…あそこ、あの建物」

Nさんはその方向を向いたが、手を振っている人など確認できなかった。助手席にいたもう一人の友達にも聞いてみたが、その友達もわからない。4人目の友達は運転をしていたので、もちろんわからないという。

そう言うと、唯一手を振る人が見えているその友達は、「あー、そうか!」と声を上げた。

「手を振っているって言うかね、手まねきしてる感じなんだよ」

そう言うのでもう一度探してみたが、やはり見つからない。手の振り方がどうこうというのではなく、そもそも人などいない…ように見える。

しばらく目を凝らして見ていたのだが、どうしても見つからない。やがて話題が他のことに移ったので、Nさんは探すのを諦めたそうだ。「わからないくらい、遠くの方で誰か手を振っていたのだろう」…そう考えることにしたという。

ただ、しばらくして、手まねきしている人が見えていた友人がこう言った。

「でもさー、ラブホテルから手まねきするなんて、いい度胸してるよねぇ!恥ずかしくないのかな…?」

その言葉に、Nさんを含む残り三人は思わず「はぁ!?」と声を上げた。

その場所には、ラブホテルなどなかったからだ。

そこには鬱蒼とした木々に囲まれた、廃墟のような建物だけがあった。どうひいき目に見ても、それはラブホテルには見えなかったという。

その数日後のことだ。手まねきする人を見たという友人が、急死したという。死因は、心不全だった。

ただ、その死が手まねきと関係しているかどうかは、さすがに分からないそうだ。

【怪談】【怖い話】

この記事の作者

田中一広

ホラーゲーム作家。企画・シナリオ・グラフィック・楽曲・プログラムまでトータルでゲームを作る一方、ライターや講師としてゲームを伝える。もちろんゲーマーとして遊びもする人生ゲーム漬け野郎。妖怪博士。株式会社Wuah!地獄の代表取締役。

この記事が含まれるコーナー

ぞくっ、とする怖い話

それは、誰かが体験した物語。
背中がぞくっとする、本当にあった怖い話…。

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