何でもない部屋【ぞくっ、とする怖い話】
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Kさんが出産をした時の話。
その年の夏、Kさんは実家で出産するため旦那さんを残して里帰りしたそうだ。
家に帰ると、Kさんが昔使っていた部屋は既に物置となっていた。
そのため、Kさんには別の部屋があてがわれたらしい。その部屋はKさんが子どものころから、何でもない部屋だった。
家族の誰かの部屋ではない。寝室でも客間でもない、かといって物置でもない。何でもない部屋としか言いようがない。
そんな部屋だったから、思わずKさんは「この部屋使っていいの…?」と母親に確認したそうだ。
すると母親は「まあ…他に部屋ないし…」と口ごもるように答えたらしい。
何か変だな…Kさんは不安になったが、他に部屋があるわけではない。しかたなく、その部屋を使うことにした。
…その夜のことだ。
Kさんが布団に入って寝ていると、ふと、誰かの気配を感じた。気のせいだろう…そう思いたがったが、気配はどんどん強くなってくる。Kさんはうっすらと目を開けた。
そこには、男の子がいたそうだ。「誰だろう…」そうKさんは思ったが、不思議と怖くはない…。
男の子はやさしく笑いながら、うれしそうにKさんのお腹をなでたそうだ
Kさんから不安な気持ちが消え、いつしかKさんは寝てしまったらしい。
…気付くと朝だったそうだ。
Kさんは起きてきた母親に、夜中に体験した出来事を話した。すると、母親は、「やっぱり…」と漏らしたという。
Kさんが深く聞いたところ、実はKさんには兄にあたる人がいたのだという。何でもない部屋は、本当はKさんのお兄さんの部屋だったのだ。ただ…お兄さんは、幼くして亡くなってしまった。
Kさんのご両親は、それ以降、どうしてもその部屋を使う気になれなかったのだという。お兄さんの死が悲しかったというのもある。ただ、その後に生まれたKさんがその部屋を使ったら、お兄さんと同じように亡くなってしまうのでは…そう、思ったのだそうだ。
「でも、そんなことないよね。だってあんたのお兄さんなんだもん…」Kさんのお母さんはそうつぶやいた。
その後、Kさんの子どもは無事生まれたという。元気な男の子だったそうだ。