郵便配達【ぞくっ、とする怖い話】
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Eさんがフリーターだった頃の話。
Eさんは夜勤シフトを担当することが多かった。そのため、夜に仕事をして朝家に帰り、午前10時ごろ床に就くような生活リズムだったそうだ。
Eさんの家には午前10時ごろ、郵便配達が手紙を配達に来る。そのため、毎日床に就くくらいのタイミングで、ブロロロロロ…というバイクのエンジン音を聞いていた。
寝る直前とはいえ、別にうるさいとは感じていなかった。むしろ、就寝を知らせるチャイムのような感じがして好ましく思っていたそうだ。
日によっては、ブロロロロロ…カタン、とスタンドを立てる音が聞こえる。それは、Eさんへの配達物がある時だ。Eさんは文通している友人がいた。LINEが当たり前な今となっては古風に感じられるが、当時はまだメールがさほど一般的ではなかったのだ。
そんなある日のこと…。
バイトを終えてクタクタのEさんが帰宅。食事をしてシャワーを浴び、床に就こうとすると…ブロロロロロ…カタン…という音が聞こえた。
ちょうど、文通相手からの返事が届くはずだった。Eさんはベッドから起きると、ウキウキとした気持ちでポストに向かった。ポストを見ると、一通の手紙が入っている。急いで手紙を手に取ると、そそくさと部屋に戻った。
早く手紙を見たい…はやる気持ちを抑えきれなかったEさんは、いそいそとペーパーナイフで開封した。そして封筒に入っていた便箋を取り出し…悲鳴を上げた。
便箋には、濃い鉛筆でメチャクチャに何かが書きなぐられていた。ところどころ「が」「ね」など判別できるが、それ以外は文字なのか何なのか判別がつかない。とにかく何かがガーっと大量に書きなぐられており、白い便せんが真っ黒に塗り潰されているのだ。
さらに…
便箋の裏には、髪の毛や爪といったものが、セロテープで沢山、貼り付けられていた…。
Eさんは思わず便箋を手から落とした。あまりの気持ち悪さに、二度とその便箋を触る気が起きなかったそうだ。体中に寒気が走り…思わずその場にへたりこんでしまったという…。
その次の瞬間…ブロロロロロ…カタン…という音が再び聞こえた。
Eさんが茫然としたままポストに向かうと…ポストには、かわいらしい封筒が入っていた。いつもの文通相手からの手紙だった。
…つまり…二回目に来たのが、郵便配達ということになる。
では、鉛筆で真っ黒に書きなぐられた手紙は、誰が運んだのだろう…?今でもそれはわからないという点…。
…いや、Eさんは調べたいとすら思わなかったそうだ。その後、Eさんはその家を引っ越したという。