第五夜-亀の泣く夜【夜探偵フクロウと謎解き暗夜】
[投稿日:
第一章・亀とオシドリ
男性と女性が子どもを産むことで、これまで人間の歴史は続いてきた。
そんな中で生まれた制度が、「結婚」。
ひとくちに「結婚」とっても、歴史の過程や国によって様々な形になっている。
日本でも、昔は家と家とが繋がる重厚な制度だったけど、今では自分のパートナーとして登録するという意味合いが強くなってきているようだし、昔はライフスタイルの主流だったけど、今では数あるライフスタイルの選択肢のひとつに過ぎなくなってきているようだ。
さて…今回の話は、ライフスタイルの選択肢のひとつとして、「結婚」を選んだ女性の物語。
その女性…亀山 智子(かめやま ともこ)は、同じ苗字を持つ男性…亀山 晃司(かめやま こうじ)と大学時代に出会い…6年の交際の末に結婚。
智子と晃司、いずれもおっとりした性格で、2人は学生時代からお似合いのカップルと呼ばれ…結婚してなお、オシドリ夫婦と呼ばれていた。
2人の結婚生活には何の問題もない。
…少なくとも、周囲の目からはそう見えていたようだ。
第二章・亀と競争
はじまりは、結婚して2年目。その年、夫の晃司は課長に昇進した。
若くして管理職。順風満帆。おめでたいこと…のように見えた。
しかし、晃司にとってはそうではなかったんだ。
おっとり型の晃司は、仕事を淡々とこなすことが得意。なので、仕事が確実でミスが少ない。そこを見込まれての課長抜擢だった。
けど、課長になると他の課との競争が激しくなった。
比較の対象となったのが、社のエースと見込まれた宇佐木 俊(うさき しゅん)が属する開発二課。
宇佐木は晃司とは違い、ミスはあるものの、圧倒的なスピードで仕事をやってのける。
確かに、ミスがあるから多少のクレームは来るんだけど、メイン部分のクオリティが高いから、ミスやクレームも許容範囲内とされた。
つまり、晃司と正反対のタイプだ。
晃司は何かにつけ比較され…余裕を失い…病んでいった。
第三章・亀と弱いものいじめ
仕事で追い詰められることは、誰にだってある。そうした時に、上手に発散できれば、病むことなく済むだろう。
しかし、晃司は酒を飲んで誰かに愚痴をこぼすとか、スポーツで発散するとか、カウンセラーに相談するといったタイプではなく、内にため込むタイプだった。
人間の精神にはキャパシティがある。どこまでもストレスを溜められるわけじゃない。
晃司から溢れたストレスは…より弱い立場の者へと向かう…。
…そう、妻の智子だ。DV…家庭内暴力さ。
智子は、それまでの晃司からは想像もつかないような暴力に、戸惑った。
しかし、結婚前から8年間も付き合った相手だ。
だから、ガマンしていれば、晃司が元に戻ると信じた。
しかし、その兆候はいつまで経っても現れない。
やがて晃司は、それまで一切飲まなかった酒を飲むようになり…内面のみならず、外見もやさぐれていった。
…事件が起きたのは、そんな中でのこと。
第四章・亀の甲羅
亀山 智子(かめやま ともこ)が死んだ。
警察はその状況から、自殺と判断した。夫のDVを苦にしての自殺。
…というのも、死体発見現場が、密室だったからだ。
智子は、甲羅に閉じこもった亀のように死んだ。
…現場は、自宅の一室。
その部屋のあらゆる窓は内側から施錠されており外部には鉄格子。扉も、内部から施錠された上、外部から南京錠がかけられていた。
完全な密室。…いや、完全過ぎる。この事件、自殺ではない。
夫、晃司による殺人事件だ。
読者への挑戦
さあ…今回は智子の死因を考えて欲しい。
犯人は、夫の晃司で間違いないよ。
答えを明かすのは一週間後…。
…一週間の間、知恵を絞って答えを考えてほしい。
答えを明かすのは一週間後…正しさが示されるのは一週間後の夜だよ…。