他に類を見ない唯一無二のアドベンチャー!人を選ぶもののプレイする価値が確実にある「シルバー事件」

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どんなものでもジャンルというのはある。当然、ゲームにもゲームジャンルと言うのがある。

たとえばFPSというゲームジャンルは一人称視点(First Person)でフィールドを移動し、敵を撃つ(Shooting)ゲーム。

脱出ゲーム/であれば、画面をタップして謎解きの手掛かりを集め、謎を解いて最終的に閉鎖空間から脱出するゲーム。

こんな風に、ゲームジャンルが分かると大体どんな感じのゲームか分かるようになっているわけだ。

もちろん、同じゲームジャンルでも世界観によって印象が異なる。

たとえば同じFPSでも、ミリタリーものとホラーでは随分プレイ感は異なるだろう。

で。そんな中で、そのゲームクリエイター独自としか言いようがないゲームというのも存在する。

無理くりジャンル分けすればできないこともないのだけど、かなり正確さに欠けてしまう…そんなゲームを作るクリエイターも存在するのだ。

そんなクリエイターの一人が、須田剛一氏であることは間違いないだろう。

今日紹介するのは、そんな須田剛一氏の代表作のひとつ、「シルバー事件」だ。

ココがWuah!「シルバー事件」の魅力は、デヴィッド・リンチを思わせるミステリアスな世界観

「シルバー事件」は、架空国家「カントウ」にある架空都市「24区」を舞台にしたアドベンチャーゲーム。

この「カントウ」では我々と凶悪犯罪に関する考え方が異なっている。

犯罪は、犯罪力によって発生。この犯罪力は、人から人へと伝染する。どうやって伝染するかといえば、見たり聞いたりといった形で犯罪に接することによって。

そこで、犯罪が発生すると、その情報がマスコミなどで国民へ伝染する前に処分する組織が存在している。

それが「凶悪犯罪課」だ。

そんな「カントウ」でかつて「シルバー事件」と呼ばれる凶悪事件を引き起こした伝説の殺人犯・ウエハラカムイが復活。

連続殺人事件が幕を開ける。

主人公=プレイヤーは、当初は「凶悪犯罪課」に対抗する別派閥の組織「リパブリック」の一員として登場するが、ウエハラカムイによってリパブリックが壊滅状態に追い込まれたことから、「凶悪犯罪課」のメンバーとして動くことになる。

ここまでを読んだだけでも、本作は現代劇に近いにも拘わらず、オリジナルな設定・専門用語が多数登場することに気づいただろう。

フツーのサスペンス・ミステリー系であればせいぜい犯罪力と、それによる犯罪の伝染というところに焦点が当たる。

しかし本作は、「凶悪犯罪課」や「リパブリック」といった組織の背後で蠢く政治問題まで踏み込んでいく。

実は「凶悪犯罪課」内も様々な派閥の人間から構成されており、個人の考え方・欲望以外に、派閥の論理が幅を利かせているのだ。

これに加えて、本作は物語る形式も複雑。

物語は、表シナリオといえる「トランスミッター」と、裏シナリオといえる「プラシーボ」から構成されている。

たいてい表と裏にシナリオがわかれている場合、表の内容を裏が補足したり、表の内容を裏でどんでん返ししたり…といった構成になっているが、本作の場合表で生まれた謎に加えて、裏で新たな謎が生まれ、謎が謎を呼ぶ

つまり、より複雑になっていくのだ。

なので、己(オレ)は本作の初代バージョンがPS1でリリースされた際、10回以上は繰り返しプレイした。

それでも細部はよく理解できていない自信がある!

ただし、複雑でわからないならつまらないのかというと、そんなことはない。

本作はおもしろい、魅力的なゲームだ。

だからこそ己(オレ)は10回以上プレイし、PS4やPC向けにリニューアル版が発売され改めて購入した。

同じようにハマる人多数。

この感覚は、ストーリーが複雑で理解しづらいのにこの上ない魅力を放つデヴィッド・リンチ監督の映画に似ていると思う。

ゲームシステムはオーソドックスなアドベンチャーゲーム!分岐は一切なし

複雑な物語を持った本作だが、ゲームシステムはメチャクチャシンプル。

基本的にプレイヤーが行うことは、メッセージを読み進めるだけ。

ノベルゲームに近い。

ただし選択肢は一切存在しない。本作に分岐はないのだ。

ただ、時折、3Dマップを探索するシーンも用意されている。

探索シーンでは、3Dダンジョンゲームのようにポイントからポイントへマップを移動。

チェックポイントを調べ、謎を解いていくという構成だ。

なので、ゲームシステムだけを見ると、比較的オーソドックスなアドベンチャーゲームと言える。

ただ、本作はアドベンチャーゲームの枠には収まっていない

というのも、物語とタメを張るほど、ビジュアル&音声演出が特異なのだ。

一見ビジュアルはフツーのアドベンチャーゲームのように見えるかもしれない。

しかし、このビジュアルは、マンガのコマや、PCのウィンドウに見える部分が、ストーリー展開に合わせて画面を縦横無尽に移動。

さらに、ウィンドウの背後でタイポグラフィが音のリズムに合わせてアニメーションしている。

音楽のPVなどの映像作品のような見せ方をしているのだ。

こんな見せ方をしている作品は、後にも先にも本作だけ。

唯一無二の作品なので、本作はゲーマーなら是非プレイしておくべき作品といえるだろう。

ただ、確実に人を選ぶ。

己(オレ)のように何度もクリアするほどハマるか、金を損したと投げ出してしまうか、イチかバチか。そんな作品だ。

基本情報

タイトル

シルバー事件(The Silver Case)

デベロッパー

GRASSHOPPER MANUFACTURE INC.

配信会社

GRASSHOPPER MANUFACTURE INC./日本一ソフトウェア(PS4版)

対応ハード

PC/PS4

価格

Steam

1,480円

【シルバー事件】【須田ゲー】

この記事の作者

田中一広

ホラーゲーム作家。企画・シナリオ・グラフィック・楽曲・プログラムまでトータルでゲームを作る一方、ライターや講師としてゲームを伝える。もちろんゲーマーとして遊びもする人生ゲーム漬け野郎。妖怪博士。株式会社Wuah!地獄の代表取締役。

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