世間話【ぞくっ、とする怖い話】

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実話怪談を収集していると、中にはやや短めの逸話も存在する。

今回はそんな短めの逸話からひとつ紹介したい。

Dさんが賃貸マンションを借りた時の話。

誰でもそうだが、引っ越す前には、隣近所がいい人だといいなあ……と考えるもの。

Dさんも、もちろんそうだった。できればご近所トラブルになど巻き込まれたくはない。

ただ、たいていの場合それは杞憂に終わる。

Dさんの場合もそうで、お隣さんは非常によい人だった。

笑顔が優しい穏やかな人で、必要以上に深く関わってくることもなく、かとちて愛想が悪いわけでもない。

お隣さんはDさんと気が合うようで、通勤時に毎日顔を合わせる度、少々世間話をするようになった。

世間話だが内容がおもしろく、Dさんはそのために少し早く家を出るようになっていったという。

そんなある日のことだ。

Dさんが勤務先から帰ってくると、不意に管理人に呼びとめられた。

管理人は心配そうな顔をして言った。

「あんた、毎朝、誰と話してるんだ?」

「え、お隣さんですけど。何か……?」とDさんが答えた。

すると管理人はこう言ったという。

「あんたの隣には誰も住んでいないぞ? ここだけの話なんだが、2年前、行方不明になったんだ……」

【怪談】【怖い話】

この記事の作者

田中一広

ホラーゲーム作家。企画・シナリオ・グラフィック・楽曲・プログラムまでトータルでゲームを作る一方、ライターや講師としてゲームを伝える。もちろんゲーマーとして遊びもする人生ゲーム漬け野郎。妖怪博士。株式会社Wuah!地獄の代表取締役。

この記事が含まれるコーナー

ぞくっ、とする怖い話

それは、誰かが体験した物語。
背中がぞくっとする、本当にあった怖い話…。

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