クラクション【ぞくっ、とする怖い話】

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Hさんが車でドライブをしていた時のこと。

時間はちょうど、深夜0時を過ぎたくらいだったそうだ。仕事が終わって、どうにも寝付けないので気分転換にドライブに出たのだという。

車通りの少ない深夜のドライブは非常に快適で、Hさんは上機嫌だった。

お気に入りのラジオを聴きながら、運転していたそうだ。

しかし、トンネルに入ったくらいからラジオにノイズが入りだし、やがてラジオの音が完全に消えた。トンネル内で電波の状況が悪いのかな、と思ったという。

すると次の瞬間、ぽぉぉぉぉーーーーっ!という音が聞こえた。

車のクラクション?暴走族か走り屋が後ろから煽っているのか……?

Hさんは焦りを覚えながらも、なんとか振り切ろうとスピードを上げた。

しかし、ぽぉぉぉぉーーーーっ!という音が遠くに離れない。

……いや、離れないどころか、ますます大きく聞こえる。一体何者なんだ……?

そう思ったHさんはバックミラーに目をやった。

しかし、車の後ろには何もいない…

……いや、違った。車の、中だ。

バックミラーに映るHさんの車内に、真っ白な顔をした女がいる。その女が、大きな声でぽぉぉぉぉーーーーっ!と喚いている。

どうしよう? どうすればいい? Hさんは焦った。

しかし、いい方法が思いつかない。仕方なくそのままスピードを上げ続けた。

そして……なんとか事故らずにトンネルを抜けると、音は止んだ。

スピードを徐々に落としながらバックミラーを見ると……先ほどの女はもういなかった。

ラジオの音も、元に戻っていたそうだ。

【怪談】【怖い話】

この記事の作者

田中一広

ホラーゲーム作家。企画・シナリオ・グラフィック・楽曲・プログラムまでトータルでゲームを作る一方、ライターや講師としてゲームを伝える。もちろんゲーマーとして遊びもする人生ゲーム漬け野郎。妖怪博士。株式会社Wuah!地獄の代表取締役。

この記事が含まれるコーナー

ぞくっ、とする怖い話

それは、誰かが体験した物語。
背中がぞくっとする、本当にあった怖い話…。

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