鏡【ぞくっ、とする怖い話】

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実話怪談を収集していると、中にはやや短めの逸話も存在する。

今回はそんな短めの逸話からひとつ紹介したい。

Mさんが引越した当日のことだ。

その日は疲れて、ダンボールから何点かの化粧道具と布団だけ出して寝てしまったという。

Mさんは疲れからすぐさま眠りに落ち、深い睡眠に入ったそうだ。

しかし、ふと夜中に目が覚めた。

トイレに行きたかったとか、肌寒さを感じたとか、何か体調の変化があったとか、そういうわけじゃない。

理由もなく、朝目覚めるように起きたら、まだ夜中だった。

まだ夜なのにどうして起きたんだろう。

そう思いながらMさんは周囲を見回した。

すると、闇の中に自分の顔が見える。

Mさんは驚いたが、そういえば鏡を出しっぱなしだった。

しかし、よく見るとそこは鏡を置いた場所ではなく、壁だったような気がする。

そう思ってMさんはさらに注意深く見つめた。

すると、やはりそこにあるのは鏡ではなかった。

それは、黒い帯のついた写真立て……つまり……Mさんの遺影だ。

そう気づいた次の瞬間、Mさんの意識はなくなっていた。

Mさんが次に気づいたのは、携帯電話のアラーム音を聴いた時。

毎朝目覚まし時計代わりに設定しているアラームだ。

もう朝かと思って体を起こしながら、Mさんは夜中のことを思い出した。

遺影に見えたアレは何だったんだろう。

そう思って見回すと、昨日出した鏡が目に入り、あっと気づいた。

Mさんがダンボールから取り出していた鏡は、ひとつではない。

2つ。

Mさんはその2つの鏡を、ちょうど鏡を合わせ鏡のように配置していた。

もしかすると、そのせいで、夜中、変なものが呼び出されたのかもしれない。

そうおもって Mさんは寒気を感じたという。

【怪談】【怖い話】

この記事の作者

田中一広

ホラーゲーム作家。企画・シナリオ・グラフィック・楽曲・プログラムまでトータルでゲームを作る一方、ライターや講師としてゲームを伝える。もちろんゲーマーとして遊びもする人生ゲーム漬け野郎。妖怪博士。株式会社Wuah!地獄の代表取締役。

この記事が含まれるコーナー

ぞくっ、とする怖い話

それは、誰かが体験した物語。
背中がぞくっとする、本当にあった怖い話…。

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