動画【ぞくっ、とする怖い話】

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Hさんは、小学生のころから親しかった友人が一人、いた。放課後が終わるといつも一緒に遊んだ。

中学、高校と一緒で、ずっと仲良しだったそうだ。

高校のころは、携帯電話を買ってもらったこともあって、よく録画機能で遊んでいたという。

といっても大したことをやっていたわけじゃない。テレビ番組や映画のマネをして、それを撮るだけ。

撮るという行為自体がおもしろかったので、後で見返すということは少なかったそうだ。

しかし、仲が良かった二人も、別々の大学に進んだためさすがに遊ぶ回数が減って行った。

ただ、何か変わったことがあると、会って話すようにしていたという。その内のひとつが、友人が車を買った時だった。

友人は高校のころから必ず車を買うと言っていた。友人の家は裕福というわけではなかったので、大学入学とともにアルバイトを開始。バイト代を貯めで合宿で免許を取り、中古車を一台買ったのだ。

車を買った友人の喜びようを見て、Hさんも自分のことのように嬉しかった。

その日は、Hさんと一緒にドライブを楽しみ、車を運転するHさんの姿を沢山録画した。とても楽しそうな顔をしていたという。

その数カ月/後、友人が亡くなった。

深夜にお気に入りの車を運転中、スピードの出し過ぎでカーブを曲がり切れず、思いきりガードレールに突っ込んだ。車はガードレールを突き破り、歩道を通り越し、その先の壁に激突。

……即死だったそうだ。

そのあまりの暴走ぶりに、警察は飲酒や薬物、病気などを疑ったそうだが、いずれの痕跡もなかった。

結局どうして友人がスピードを出すに至ったのか、分からずじまいだったという。

Hさんは、友人を失ったショックで数日間塞ぎこんだそうだ。大学に行かず、バイトも休み、家に引きこもった。

……数日経ち少し精神状況が落ち着いたHさんは、友人との思い出にひたりたくなって、貯まりに貯まった動画を片っ端から再生していったという。

どの映像でも友人は朗らかに笑っていて、Hさんは涙を止めることができなかった。

やがて、あれだけあったはずの動画も減っていき……車を買った時に撮影した動画になった。

つまりその動画には、友人が死ぬ原因となった車が映っている。

……複雑な心境だったが、Hさんはその動画を見ることにしたという。

動画には、車を買って素直に喜んでいる友人の姿があった。そのまま見ていると、やがて場面はドライブ中に……。

すると……不意に映像が乱れた。ノイズが走り、映像がゆがむ。

そして、キィィィ!という音が響く。急ブレーキをかけ、タイヤが削れているような音だ。

その音にかぶさり、「げぇぇぇぇえええぇぇぇ」という、叫び声のような音。

しばらく叫び声が続きやがて途絶えると、今度は「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」という荒い呼吸音がした。

そして、呼吸音が途絶えると……映像のゆがみが元に戻った。

ゆがみが戻るとそこには、楽しそうに車を運転する友人の姿……。Hさんはその動画を思わず消去してしまったという。

今から考えれば、その動画を見返せば、事故の原因が分かったかもしれない……そう後悔することもあるとのことだ。


ごぉぉぉぉぉ……といううなり声のような音を立て、真っ赤な炎が踊っている。

その炎に、Iさんの体が焼かれる。熱い。物凄く、熱い。炎が、Iさんの体を灰に変えていく……。痛い。それまで味わったことがないような、痛みだった。

熱さと痛み……そして恐怖心に耐えられず、Iさんは目を開けた。そこには……。

遺族役の子が親を引き連れて、戻ってきていたという。その後、3人ともこっぴどく叱られたそうだ。

夢なのか……それとも子どものころの感受性の高さが招いた妄想のようなものなのか……。

炎の正体はわからないものの……その映像自体は今でもくっきりと思いだせるほど、目に焼き付いているという。

自分が死ぬ時……、あの炎をもう一度見るのかもしれない。

Iさんは、なんとなくそう思っているそうだ。

【怪談】【怖い話】

この記事の作者

田中一広

ホラーゲーム作家。企画・シナリオ・グラフィック・楽曲・プログラムまでトータルでゲームを作る一方、ライターや講師としてゲームを伝える。もちろんゲーマーとして遊びもする人生ゲーム漬け野郎。妖怪博士。株式会社Wuah!地獄の代表取締役。

この記事が含まれるコーナー

ぞくっ、とする怖い話

それは、誰かが体験した物語。
背中がぞくっとする、本当にあった怖い話…。

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