気配【ぞくっ、とする怖い話】

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Kさんはまったく霊感がない。また、心霊的なものを信じたこともない、怖いと思ったことすらないそうだ。ただ、少しだけ…、不思議な経験をしたことがあるという。これは、そのお話。

その日の夜、Kさんの家に友達が遊びに来た。食事をしながら話を聞くと、日中、いわゆる心霊スポットに行ってきたという。

その場所は廃墟となった建物で、人がまったく立ち寄らない。周辺の手入れが行われていないので鬱蒼とした木々に囲まれており、電気も通ってないので昼でも薄暗いそうだ。

そこで……友達は、幽霊と会ったのだという。いや…正確には、感じた

誰がが、建物の中にいる気配。強く見つめてくる視線。もちろん、見回しても誰もいない。だが…確かに感じたのだそうだ。

もちろん、そう言われたところで、Kさんは信じなかった。見てもいない、音がしたわけでもない、そんなもの気のせいに決まっている…そう、Nさんは思ったという。

その友達が帰ったのは深夜2時ちょっと前だったそうだ。さすがにこの時刻になると、辺りはしん…と静まりかえっている。

ただ…Kさんは違和感を覚えた。

確かに静かなのだが、何故か…そこまで静かに感じない…。確かに友達は帰った。家はKさん一人になった。

…にもかかわらず…一人ではないような…。まだ、誰かいるような…そんな感じを受ける。

さっきあんな話を聞いたせいで、変に意識しちゃってるのかもしれない。気のせいに違いない……そう言い聞かせて、Kさんは床に就いた。

しかし……何故か寝付けない。誰かがすぐそばで自分を見ているような感じが、止まらない。目をつぶって気にしないことにしても、頭からふとんをかぶっても、どうにも何かの気配を感じてしまう。

その日結局、Kさんは朝まで寝られなかった。

いや……気配は、その日だけに留まらなかった。翌日も、その次の日も……どうしても気配を感じてしまう。寝られない。結局Kさんは、病院で不眠を訴え、睡眠薬を処方してもらったという。

そんなある日、パタリと、気配がなくなった。

その次の日ぐらいに、心霊スポットに行った例の友達から電話があった。聞くと、友達はその前日、おはらいに行ったのだそうだ。

「心霊スポットから帰ってからずーっと、人の気配というか視線みたいのを感じるようになっちゃって…。でも昨日おはらいしてもらって、スッキリしたよ!」

Kさんは今でも心霊的なことは信じていない。

でももしかすると、あの気配…視線と、おはらいとは何か関係があったのかもしれない…。…そう思ってしまうことは、時折あるという。

【怪談】【怖い話】

この記事の作者

田中一広

ホラーゲーム作家。企画・シナリオ・グラフィック・楽曲・プログラムまでトータルでゲームを作る一方、ライターや講師としてゲームを伝える。もちろんゲーマーとして遊びもする人生ゲーム漬け野郎。妖怪博士。株式会社Wuah!地獄の代表取締役。

この記事が含まれるコーナー

ぞくっ、とする怖い話

それは、誰かが体験した物語。
背中がぞくっとする、本当にあった怖い話…。

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