旅行の晩【ぞくっ、とする怖い話】

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Mさんが熱海に旅行をした時のこと。

旅行1日目……観光を終えたMさんは、お酒も手伝って夜の10時には床についたそうだ。

しかし、何かの気配を感じて、すぐに目が覚めた。

Mさんは、左向きで寝る癖がある。

このため、必ず右耳が上を向く。その右耳に、こんな音が響いていた。

……ぎぃ……ぎぃ……ぎぃ……。

何の音なんだろう。そう思ったものの、まだうとうととした眠気が残っており、そのまま寝てしまった。

次に目が覚めたのは、朝だったという。

翌日も、Mさんは同じホテルの同じ部屋に泊まった。その夜Mさんは、体がだるかったため、お酒を控えた。食事もほとんど残してしまったという。

床についたのは、一日目と同じ、夜10時。

だるさからか、気絶するように眠りについたそうだ。

すると、一日目と同様、何かの気配を感じ目が覚めた。

……ぎぃ……ぎぃ……ぎぃ……。

一日目と同様、右耳に音が届いている。

……ぎぃ……ぎぃ……ぎぃ……。

一日目と違い、目は冴えていた。音は鳴り続いている。

……ぎぃ……ぎぃ……ぎぃ……。

この音は何なのだろう。そう思ったMさんは体を動かそうとした。

……しかし、動かない。金縛り/のような状態だ。

体が動かせない中、……ぎぃ……ぎぃ……ぎぃ……という音だけが鳴り続いている。

そんな中、ゆっくりと目が慣れてきた。暗闇に、何かの影が浮かび上がる。

それは……はだしの足。

その足は吊るされたように浮いており……揺れていた。

……ぎぃ……ぎぃ……ぎぃ……という音は、足が揺れるのに合わせて鳴っている。

――誰かが、この部屋で首を吊っている!?

……Mさんの記憶があるのはそこまでらしい。気付くと、朝になっていた。

旅行は三泊四日の予定だったが、次の日Mさんは旅行を中止して家に帰ったという。

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【怪談】【怖い話】

この記事の作者

田中一広

ホラーゲーム作家。企画・シナリオ・グラフィック・楽曲・プログラムまでトータルでゲームを作る一方、ライターや講師としてゲームを伝える。もちろんゲーマーとして遊びもする人生ゲーム漬け野郎。妖怪博士。株式会社Wuah!地獄の代表取締役。

この記事が含まれるコーナー

ぞくっ、とする怖い話

それは、誰かが体験した物語。
背中がぞくっとする、本当にあった怖い話…。

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