非常扉【ぞくっ、とする怖い話】

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不思議なことに遭遇しやすいというTさんが高校生のころの話。

その高校では、同じ学年の生徒全員が一泊二日ほど寝食を共にするという、林間学校のようなイベントがあったそうだ。

ただ林間学校のようにテントや民間の宿泊施設を利用するのではなく、その学校が所有する宿泊施設に泊まるとのこと。そして…どうもその宿泊施設は、出る…と言われていた。

…とはいえ、どこの学校にもそういう作り話のひとつやふたつはある。しかも、学生のころは怖がっている友人の姿がおもしろく思えるもの。この話も、どうせ作り話に違いない…Tさんはそう思ったようだ。

実際、その宿泊施設で幽霊にでくわすことはなかった。ただ…ひとつ、不思議なことがあったらしい。

夕飯の時、Tさんは一番端っこの席に座った。

その席の隣には内開きの大きな非常扉があったという。その扉が、内側に開いていた。

大きく開いていたので、すー、すー、と風が入ってくる。

隙間風どころじゃない。寒さにたまらず、Tさんは扉を閉めた。そして、席に戻ってくる…。

…と、閉めたはずの非常扉が、開いていた。先ほどと同じくらい大きく。

周りには確かに、Tさん以外の人はいなかったらしい。

見ていた友達も皆、他の人間はいなかったと言っている。

「…まあ、友達にドッキリ仕掛けられただけかもしれませんが…」とTさんは語っていた。

【怪談】【怖い話】

この記事の作者

田中一広

ホラーゲーム作家。企画・シナリオ・グラフィック・楽曲・プログラムまでトータルでゲームを作る一方、ライターや講師としてゲームを伝える。もちろんゲーマーとして遊びもする人生ゲーム漬け野郎。妖怪博士。株式会社Wuah!地獄の代表取締役。

この記事が含まれるコーナー

ぞくっ、とする怖い話

それは、誰かが体験した物語。
背中がぞくっとする、本当にあった怖い話…。

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