こっくりさん【ぞくっ、とする怖い話】

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Tさんが、まだ高校生だったころの話。

そのころのTさんは占い好きで、毎月/占い雑誌を買っていたという。

ある月、その雑誌で「こっくりさん/」を特集していた。

十円玉に指を乗せて霊を呼び出し、霊に様々な質問をするというあの「こっくりさん」だ。

雑誌には「絶対にマネをしないように」という注意書きがあったが、Tさんは興味を持ち、「やってみたい」と思った。

そこで普段から仲の良い2人の友だちに話を持ちかけると、友だちも意気投合。

ある日の放課後、3人で「こっくりさん」をやってみることにした。

雑誌に書かれている通りに、紙へ50音とはい/いいえ、鳥居の絵を記載。

雑誌によると、霊との縁を強めることができるということから、10円玉より5円玉の方がよいという話だったので、5円玉に3人、指を乗せた。

「こっくりさんこっくりさん、どうぞこの場においでください……」

3人は雑誌に書かれた通りに、こっくりさんを呼び出す言葉を口にする。

……何も起きない。

雑誌によると、霊が呼び出された場合は、「はい」の場所へ5円玉が移動するはずだが、移動するどころかピクリとも動かない。

「こないね……」

「……どうする?」

「このままこうしていてもしょうがないし、やめよっか……」

いくら経っても5円玉が動かないので、3人は「こっくりさん」やめることにした。

雑誌によると、やめる際には「こっくりさんお戻りください」と言って五円玉が「はい」に戻ったのち、「おいでいただきありがとうございました」と礼を述べるというのが作法だった。

しかし、3人はこの作法を行わなかったそうだ。

というのも、お戻りくださいといって「はい」に戻るという前に、おいでくださいという呼びかけにすら「はい」と答えていない。

つまり、そもそもこっくりさんが呼び出されていない。

呼び出されていないものを戻すこともないだろう、と判断したそうだ。

学校からの帰りの道すがら、「こっくりさん」が失敗に終わって物足りなかったから、3人は喫茶店に寄ったという。

3人でいつも寄っている喫茶店。店員とも顔見知りだ。

その喫茶店でTさんはあることに気づいた。

コップと、おしぼりが4つ出されている。ひとつ多い。

店員さんが、うっかり間違えたのかもしれない。

でも、いつも3人で寄っているというのに間違えるだろうか。

いや、うっかりというのはそういうものだろう。

でも……。

Tさんがそんなことを考えていると、一人の客がレジへと向かった。会計を済ませている。店員が「ありがとうございました」と告げる。その客は、その言葉に答えるでも会釈するでもなく、そそくさと喫茶店を出ていった……。

その光景を見てTさんは、こう思ったという。

人に挨拶をしない人は、死んだ後も挨拶をしないだろう……、と。

なら、「こっくりさん」は霊を呼び出していたのかもしれない。「はい」と答えなかっただけで。

それ以降、Tさんが何か不幸に巻き込まれたとうことはない。

しかし、占いの類は一切やめてしまったという。

【怪談】【怖い話】

この記事の作者

田中一広

ホラーゲーム作家。企画・シナリオ・グラフィック・楽曲・プログラムまでトータルでゲームを作る一方、ライターや講師としてゲームを伝える。もちろんゲーマーとして遊びもする人生ゲーム漬け野郎。妖怪博士。株式会社Wuah!地獄の代表取締役。

この記事が含まれるコーナー

ぞくっ、とする怖い話

それは、誰かが体験した物語。
背中がぞくっとする、本当にあった怖い話…。

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